~東京は「現状維持するコスト」が高い、その理由~

「この違和感はどこから来るのだろうか?」

という問いを立ててみたとき、とある仮説が立ちました。

 

マズローの欲求段階説で説明されている、欠乏欲求(人間が持つ「生存」・「安全」・「所属」・「承認」の4つの欲求)を満たすうえで、東京は極めてコストの高い環境です。

4つの欠乏欲求を満たしたうえに存在欲求(自己実現の欲求)があるとされていますが、もともと自己実現の可能性が広がる世界を目指して東京に出てきたにもかかわらず、その足場となる欠乏欲求を満たすコストが高すぎて、なかなか自己実現に向かいにくいということが起きているのではないか、という仮説です。

 

いまの日本では、生存欲求を脅かされる環境はなかなかないかもしれませんが、安全欲求については地域によってコストは変わってくるでしょう。東京で安全・安心な家に住むためには高い家賃を払う必要があります。都心から離れれば家賃は抑えられますが、そうなると通勤コスト(かかる時間や通勤ラッシュでかかるストレス)が高くなってしまいます。所属欲求は、地方から出てくると家族や親戚からは離れ、東京でできるコミュニティは仕事を中心とした人間関係が多く、また、そのなかで承認欲求を満たそうとすると、周りの優秀な人達との競争となり、自ずと欲求を満たす難易度は高くなっているかもしれません。

 

「それこそがまさに成長環境である」と全力でチャレンジしている方々も多いことでしょう。

ただ、そのうえでいま「このままでよいのか?」という漠然とした違和感を覚えている方は、日々東京という高コストな環境で自己実現に向かう「しんどさ」を感じ始めているのかもしれません。

 

「人生100年時代」という言葉はすでに認知されて来ており、「生きがい」の重要性を問う記事も多く目にするようになりました。「生きがい」とは4つの欠乏欲求を満たすために生きるのではなく、4つの欠乏欲求を満たした上に存在する「自己実現欲求」に向き合ってこそはじめて得られるものでは無いでしょうか。

 

 

~地方は確かに東京より暮らしやすいかもしれないけど…~

地方は4つの欠乏欲求を満たすコストが、東京ほどは高くありません。生存欲求を満たすのはよほど不便な地域で無い限り今の日本では保証されていそうです。安全欲求に関して、住む場所をはじめとした安全に生活を送るための環境を維持するためのコストは東京よりも地方の方が低いと言えます。所属欲求については、生まれ育った土地では家族や親族とも身近に生活を送り、職場以外のコミュニティとの関わりもありますので、多様な組織・コミュニティに属する機会は多そうです。そして承認欲求については、全国から人が集まる東京での競争環境と比較すると、地方はそこまで競争は激しくないでしょう。企業や地域によっては解決すべき課題が手付かずで残っている場合もあり、実践の場を通じて評価が得られる機会は多いように感じます。

 

ただ、地方でのキャリア形成にまだまだ目が向けられていない現状があります。この半年「いつかは地元に帰りたい」という思いを持つ方とお話するなかで、「なぜすぐに地元に帰ろうと思わないのか?」という問いに対して多くの方が「キャリアにおける自己実現イメージが持ちづらい」という点をあげておられたのが印象的でした。

 

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著者プロフィール

高尾大輔
福岡県生まれ、東福岡高校出身。北海道大学を卒業後、住宅関連のベンチャー企業での営業・新規支店立ち上げを経験後、リクルートエージェント(現リクルートキャリア)に転職し人材紹介コンサルタントとしてのキャリアをスタート。ベンチャー・スタートアップ企業の幹部採用支援に特化したプロコミットにてコンサルタント、事業責任者を務め、2018年に独立。(国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE,Inc. GCDF-Japan キャリアカウンセラー)

<受賞歴>
ビズリーチ主催「ヘッドハンター・サミット」年間最優秀賞・優秀賞受賞
リクルートキャリア主催「MVA(Most Valuable Agent)」最優秀賞受賞・優秀賞受賞