病気になった直接的要因

前の記事で書いた働き方や環境が、体を壊す遠因になったと思うけど、直接引き金を引いた事象がある。それは前の記事でも触れた「これぐらいまでなら耐えられるだろう」というハードワークを再びやってしまったときに起こった。毎日かなり短い睡眠時間で体を酷使し、それを一ヶ月以上続けた。だが、それ以前のハードワークと今回とで違ったことは、会社がマザーズに上場したばかりの状況で、事業に対する責任とプレッシャーがそれ以前の比ではなかったこと、数年に渡る疲労が蓄積していて、もはやハードワークを支える気力と体力が限界に達していたことだ。

 

病気の発症

そんな状況下でハードワークを続けていると、これまで経験したことのない体の症状が次々と表れた。具体的には、「眠らない」のではなく、「眠れない」状態なっていったこと。ベッドに横になっても不安と緊張が襲ってきて、動悸が激しくて落ち着かなくなった。また、そうなると早めに就寝しようとしても中々寝付けないし、朝もかなり早く目覚めてしまうのでまともに休養が取れない。業務中には、情緒不安定になって突然泣きたくなったり、妙な緊張感が襲ってきてキーボードを打つ手が震えたりもした。こうなるとさすがに異常だし、仕事にならないと感じて、心療内科を受診することになった。

 

診察の結果は、「双極性障害Ⅱ型」という病名だった。診断を受けた僕はまず、社内役員陣にその旨報告し、その後自宅療養。そして最終的に2014年10月、会社設立4年後、東証マザーズ上場から半年後、「一身上の都合」により役員を退任することになった。この年の6月に30歳になったばかりの僕は、長い療養生活に入ることになる。

 

予兆はあった

しかし、実際に病気と診断される以前から、今思えばその予兆となる症状は出ていて、社内のメンバーからもそういった指摘を受けることもあった。それをちゃんと真に受けて何らかのアクションをしていたとしたら、最悪の結果にならなくて済んだかもしれない。

例えば、チック症のような症状が出ていていたり、起床時に幻覚を見たり、睡眠時の異常行動(僕の場合は自分の手で顔を叩き続ける)が出たり、突発的なトラブルが発生したときに激しい動悸が起きたりなど。健康なときには絶対に起きなかった症状が予兆として出ていたにも関わらず、僕は自分の体をいたわることを怠った。

もし読者の中で、僕と似たような症状でなくとも何か気になる症状があったとしたら、すぐにでも心療内科を受診することをおすすめする。それは何も恥ずかしいことではないし、病気になった後の苦労に比べれば全然マシなことだ。それらの予兆は必ずしも仕事に支障が出るものではないかもしれないが、いざ病気になってしまえば、仕事どころの話ではなくなってしまうからだ。

 

病気の症状(僕の場合)

メンタル疾患には同じ病名が付いていても万人が完全に同じ症状が出るとは限らない。「双極性障害Ⅱ型」という診断を受けた僕は、次のような症状が発生していて、仕事どころではなくなってしまった。

吐き気を伴う頭痛

頭痛と言っても風邪やインフルエンザのような頭痛ではなくて、頭部の筋肉という筋肉が緊張を通り越して硬直状態になってしまい、同時に吐き気も襲ってくる。病気になった当初、この頭痛が本当にキツくて、今思い出しただけでも吐きそうだ。

 

激しい動悸、不安、緊張

何か不安な対象があるわけではないのに、不安と緊張が止まらなくなる。はじめは就寝前だけだった激しい動悸が、日中も断続的に起きるようになる。脳内の不安と緊張を司る器官が暴走しているらしいのだが、これも本当にツラい。それに、この不安や緊張は寛解した後でも起きることがある。退任後、半年後に正社員として復職する直前にも発生したし、今でもたまに起きることがある。

 

体に力が入らなくなる、脱力感

これは文字通り、体に力が入らない。例えば椅子から立ち上がるのも難儀になってしまうほど。体から血の気が引いてしまった感覚で、体を動かすことが億劫になる。

 

感情の起伏が激しくなる、抑制がきかなくなる

突然泣き出してしまったり、ちょっとした周囲の言動で極端に気落ちしてしまう。今思えばおかしな話しだが、電話先の相手の声がちょっとそっけなく感じただけでも、「自分が嫌われている」かのように感じてしまうのだ!頭ではなんで自分はそんなに極端に反応するのだろうと不思議でも、体がそのように反応してしまうのである。

 

無気力、無感動、虚無感

何をする気も起きなくなって、一日中家で寝てるか座っているかになってしまう。自分の人生がひどく無意味なものに思えてきて、ひどく悲しくなる。身体的苦痛ではないけれど、精神的にはこれが一番こたえた。

 

文字や文章を読むと目眩と頭痛が起こる

PCだろうがスマホだろうが書籍だろうが、文章という文章を1ページとして楽に読み終えることができなくなる。文章を読むとクラクラして目の奥が痛くなり、しまいには頭痛までしてくる。文字を認識する能力は人間の脳の中でも高度な機能に属するらしい。メンタル疾患とは脳の病気なわけで、脳の機能が低下するとこういう症状が起きても不思議ではないらしい。仕事の大半がPCやスマホなどの情報端末と向き合う仕事だったので、この症状を自覚したときは、自分がちゃんと再起できるのか、もしこの症状が治らない可能性を考えると、絶望的な気持ちになった。

 

メンタル疾患を患って思うこと

他にも挙げようと思えばいくつも身体や精神に異常が表れたのだが、主だったものではこれらのような症状だった。今日現在では身体的不調はほぼ寛解していて、精神的にも仕事に対する活力が湧いてきているのだが、いくつか以前の健康なときとは異なる違和感は残っている。ざっくりいうと、「うまく体調をコントロールしないと、またいつおかしくなっても不思議じゃない」という違和感を、体に抱えながら生活している。

メンタル疾患に「完治」ということは期待できないのだと思う。それでも僕は以前のように生き生きと働きたいと思っているし、チャレンジし続ける人生を諦めたくない。ただ、そのためには自分の身体と精神をいたわり、身体に残った「違和感」をしっかり観察していかなければならない。もはやするつもりもないが、以前のような無茶はできなくなっている。

正直、自分の心と体におきた症状や病名を具体的に書くことはためらわれたのだが、自分の体に鞭打って働いている人に、そのツケがどれほどのものか知ってほしかったので、恥を忍んで記載することにした。僕みたいに体を壊す人は一人でも少ない方がいいし、体を壊すまで病気のリスクに気づけないのは愚かなことだ。恥ずかしいことに、僕は病気になる直前まで「自分は大丈夫」とバカみたいに信じていたのだ。

 

そんな僕だったが、さすがに病気になってしまうと大切なことに気づくことができた。

 

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著者プロフィール

中村 義之
株式会社YOUTURN代表。地方のアセットを活かして持続可能なライフスタイルとイノベーションを生みだすための起業インフラを創出中。メイン事業はU・Iターン特化の転職エージェント。地方のスタートアップで活躍したい人材募集中。