「治っても働けない」という状態

メンタル疾患になった者にとって、病院での治療を終えることが即ち職場復帰につながるとは限らない。

医師からは「寛解」と診断してもらっても、会社に出社できる状態ではないこともあるからだ。

これは是非、企業の人事担当者、マネジメント層にいる方に理解してほしいのだが、「治ったのに出社できない」という状態は現に存在するのだ。普通の感覚では「病気が治ったなら出社できるでしょ」と思うだろう。そう思うことに何の罪もない。しかし、どうか理解して欲しい。繰り返す、「治っても、会社に行けない」ことがあるのだ。

 

治っても、会社に行けない理由

なぜ会社に行けないんだろう。「行きたくない」のか。いや、体が拒否反応を起こして「行けない」のだ。

僕の場合は、いざ復職しようとする直前に、強烈な頭痛、喘息のような息苦しさ、激しい動悸が襲ってきた。すでに「寛解」しているにも関わらずだ。この症状を経験してみれば、「行けない」と表現するしかないことを理解してくれると思うのだが、、そうもいかないので言葉で表現してみよう。

復職前に体が拒否反応を起こしたのには、僕なりにいくつか理由があると思っている。

(あくまでも僕の場合の理由なので、人それぞれ各様の理由があるだろう)

 

1.病気の原因となった環境への拒否反応

ストレスの原因は一つに限らず、いくつもあるし、睡眠不足も一つのストレスだ。だけど、「会社」あるいは「オフィス」という概念や建造物がそのストレスの象徴となってしまっている。その象徴に対して体が拒否反応を起こすのだ。そう、強烈な頭痛を引き起こして、「あそこには近づくな」と訴える。

 

2.病気が再発するのではないかという恐怖心

数ヶ月もの間治まっていた頭痛が突然再発したのは、復職の可否を決める産業医面談の直前だった。「また出社する」ということを明確に意識した瞬間、再発への恐怖が見事に体の症状として現出した。

 

3.本当に治っているのか?という不安感

このような体の強烈な拒否反応は、「順調に回復している」と思っていた心の平安を一瞬で薙ぎ払う。「こんなに長い間休んでいたのに、まだ治ってないのか」という絶望感。こんな体の症状が出てしまったら、会社に「行けない」し、もちろん「行きたくない」、「行くのが怖い」。

 

復職までの期間を設定しないで欲しい

このように、病気が治っても脳はストレスの記憶を体に刻み込んでいる。治療が終わっても、復職に向けた準備でメンタル患者達は不安や恐怖と闘っている。だからどうかメンタル疾患で療養中の部下や同僚を待つ人は、それを理解して欲しい。

そして、理解すると同時に、「復職までの期限を設定しない」で欲しい。

悲しいことに、「いつ復職できるか」は本人にも医師にも分からない。「○月までに復職しなきゃいけない」という認識をさせることが、上述した不安や恐怖を助長することは想像に難くないだろう。

「○月までに復職しないといけないのに、まだこんな体の反応が出るなんて、、俺は本当に大丈夫か・・」という思考に陥ることが、心の平穏を著しく乱すことは分かってくれると思う。

だから、期限を設定してはいけない。便宜上設定したとしても、柔軟であるべきだ。

僕は、役員を2014年10月に退任した。治療とリハビリを経て、正社員として復職できたのは翌15年5月だ。当初、会社からの要請で復職の面談を産業医と始めたときは、年始には復職する予定だった。それが伸びに伸びて、結局復職するのに半年かかった。

僕の場合は幸いにも、会社側が僕を急かすことなく、僕のペースを尊重してくれた。もし、会社側から「○ヶ月以内に絶対復職してくれ」とか「もう治ったからまた働けるよね」なんて言われていたとしたらゾッとする。

 

復職はタフな作業。周囲のサポートが必要

とはいえ、いつかは復職しないといけない。但し、そのタイミングを決めるのは本人であって、他人ではない。そして、その本人は、タイミングを延期することを躊躇してはいけない。

メンタル疾患の治療において、復職が最もストレスの掛かるイベントであることは確かだ。それは本当にキツい。

そのキツさを無理せず受け入れる心と体の準備ができてから、明確な日付を設定しよう。周囲の人は、それを暖かく見守り、受け入れて欲しい。

 

次へ【病気のプロセス別 対処法 】