病気から復職への各プロセス

僕の病気体験を時系列でまとめるとこんな感じだ。

  1. 【未病状態】 心身に違和感を感じながらも仕事を続けている
  2. 【発病の未自覚】 仕事に支障をきたすレベルなのに病気を自覚しない
  3. 【発病の自覚】 周囲の勧めで病院を受診⇒病気と診断される
  4. 【治療期間】 治りたい一心で真面目に治療に取り組む
  5. 【リハビリ期間】 「治ったのに働けない」と格闘
  6. 【復職とその後】 新しい働き方を模索し始める時期

 

必ずしも全ての人が僕と同じような病気体験をたどるとは限らないだろうが、各期間で僕が学んだ教訓をもとに疾患の当事者と関係者に伝えたいことを書いてみる。

 

1.未病状態:心身に違和感を感じながら仕事を続けている

当事者へ:

この状態で必ず病院かカウンセリングに行って欲しい。自分の気持ちを誰かに話すことで楽になるし、話す対象が専門家であることが望ましいからだ。

ためらいを感じる人がいたら、想像してみて欲しい。もし病気になって、「半年・一年働けなくなったとしたら?」、「傷病手当金はどれぐらいもらえる?それは自分や家族を養っていく上で十分な金額か?」

あるいはこういう問いでもいい。「半年・一年間、自分のキャリアが病気で断絶することと、7〜8割ぐらいの力で一旦徐行運転してみることでキャリアの継続を図ること、どちらがリスク高い?」

 

関係者へ:

身の回りの家族・同僚が精神的に参ってそうだと感じたら、ぜひそっと本人に声をかけてあげて欲しい。その時の声の掛け方にコツがある。

「ストレスかかってヤバそうだね?病院行ってみたら?」はダメ。

「あなたに今倒れられると困る。私達にとってかけがえない存在なので、万一のためにも一度病院でチェックを受けてきて欲しい。」これが正解。

「ストレスかかっててヤバそうじゃね?」だと、こういう人は強がってしまうのだ。「いや、全然だいじょうぶ。」なーんて答えが絶対返ってくる。

まずは頑張りを肯定してあげて、あなたとみんなのために、病気になるリスクを避けて欲しいと伝えると、「そう言ってくれるなら病院行ってみるぐらいはしよっかな」と思ってもらいやすい。

 

2.【発病の未自覚】仕事に支障が出ているのに病気を自覚しない

当事者へ:

まず、仕事に支障があるということは、心身もかなりツラい状態のはずだ。自分が病気であるか否かは一旦置いといて、「楽になる治療や処方を聞くために専門家に話しを聞こう」と考えてみよう。そんなツラい状態を我慢する理由なんてどこにもないでしょ。「病院行く暇あったら仕事しなきゃ」なんて思っていたらかなり重症。そんな状態で仕事しても成果出ないしツラいだけなんだから、早いところ病院行きましょう。

 

関係者へ:

次のような家族や同僚がいたら、黄色か赤信号だと思ったほうがいい。仕事を休みがち、朝遅刻してくることが多い、頭痛・吐き気・不眠のいずれかの症状がある、などなど。この状態の人は、明らかに仕事や日常生活に支障が出てしまっているので、半ば強制的にでも通院するよう勧めるべきだ。「病院で見たもらったほうが楽になるよ」と背中を押してあげよう。

 

3.【発病の自覚】周囲の勧めで病院を受診⇒病気と診断される

当事者へ:

病院で伝えられた処方を素直に受け入れよう。もし病気になっていたとしたら、即日休職を申し出たほうがいい。その際、期限は設定しないこと。医師と相談して「復職の目安」は伝えても構わないが、あくまでも「期限」にはしないように。

また、病気と診断されなかったとしても、心身の異常が多少なりとも認められる場合は、何らかのアクションを起こすべきだ。その際僕が強くオススメするのは、「自分や周囲が考えるより、さらに一歩進んだ休養を取る」ことだ。

例えば、「当面残業は控えよう」という考えが浮かんだら、「当面半日勤務にしてもらおう」。あるいは、「当面半日勤務にしよう」だったら、「数週間ぐらいまとまった休みをもらおう」。「一ヶ月休職する」だったら、「三ヶ月休職する」などだ。

なぜそう勧めるかと言うと、「これぐらいで治るかな」では中々良くならないことを僕が身をもって知っているからだ。特に働きすぎて心身に不調をもった人の場合、休養よりも仕事のプライオリティが高くなりがちだ。仕事を優先したい気持ちが「治療にかかる日数をタイトに見積もりがち」であることを認識しよう。

 

関係者へ:

上記と同様、休職の申請をされた場合、「目安」は設けても「期限」は設けないこと。また、「いつまでに必ず治してね」などは絶対に禁句。

「いつになっても受け入れるよ」と伝えることで当事者は安心するし、むしろ焦って復帰させないほうが、復職後も長く働いてくれるはずだ。焦って復職してまた再発したら、本人にとっても会社にとっても良いことは何もない。

 

4.【治療期間】真面目に治療に取り組む

当事者へ:

この期間では特筆することはない。医師の話しをよく聞いて治療に専念すればいい。

但し、メンタル疾患の場合は、問診の際に自分の心情を吐露する必要があるので、コミュニケーションの相手である医師との相性が重要だったりする。

僕自信も「あ、この医者とは合わないな」という経験をした。その病院は初診だけでもう二度と行くことはなかったが、もし我慢して通い続けていたとしたら何らかのストレスには間違いなくなっただろう。「合わない」と思ったら特別な理由がない限り他の病院や医師に当たるべきだ。

 

関係者へ:

この治療期間でのコミュニケーションでは、「どう、良くなった?」などの質問はしない方がいい。聞いたとしても「最近どう?」ぐらい。

治療の進捗がどうあろうとも普段と変わらないコミュニケーションを取ってくれると当事者は安心する。もちろん、本人から「最近気分がいい」とか「体調の改善を実感している」などを話してきたら、素直に一緒に喜んであげれば良い。

そのときに注意してほしいのが、想定よりも早いペースで回復しているように見えたとしても、早とちりしないこと。その日たまたま気分が良いだけかもしれないし、何かのきっかけで症状が一変することもあるからだ。

 

5.リハビリ期間:「治ったのに働けない」と格闘

当事者へ:

この期間が最も「心の持ちよう」が重要な役割を担うと僕は思っている。この期間で一番大切なのは、「人生を思いっきり楽しむこと」だ。

一旦病院での治療が終わっているわけだから、週に何度も病院に通う必要はなくなっているはずだし、思い切って一週間か二週間ぶっ続けで旅行に行ってしまおう。

真面目な人ほど、「休職期間だから療養に専念しないと。同僚は働いているのに、自分だけ遊んでるのは申し訳ない」なーんて思ってしまいがちだ。

そんなこと一切顧みる必要ない。なぜなら、「人生を最高にエンジョイすることを通して、心と体に活力をもたらすこと」が今のあなたの務めだからだ!

毎日、毎日、自分が心の底から楽しめることだけをしよう。そうすると、いつの間にか元気になっているはずだ。

「休職期間」を、「人生の苦行」のようにとらえること、あるいは、「人生の中での無価値な時期」ととらえることだけは絶対にやめて欲しい。休職期間の1月、1日、1分、1秒もあなたの貴重な人生の時間なのだ!

ある意味、「病気は治っていても働かなくていい時期」なのだから、人生の思い出をたくさん作ってしまえばいい!

僕はこの期間にたくさん旅行に行って、たくさんの思い出を作ることができた。もし働いていたとしたら絶対に作り得なかった最高に楽しい思い出だ。

そんな生活を続けていると、「早く復帰して働かなきゃ」という気持ちが、「いつまでも遊んでいたい!働きたくない!」へと変わっていく。そしてそれを過ぎると、「楽しく働いていた日々」をたまに思い出すようになる。そうなったときが「頃合い」だ。

「楽しく働ける条件」を自分の中で具体化して、それを実現できる働き方を復職後に実行すればいい。

この記事を読んだ休職中の当事者の方が、「楽しんで働ける!」という状態になってから復職されることを切に願う。

 

関係者へ:

病気の当事者でない限り、この期間の当事者の心境を想像するのは難しいことだと思う。実際僕も病気にかかる前は想像さえしなかったことだ。

実際に病気になってしまった僕から関係者の方々に伝えたいことは、この期間に「人生を楽しむことを奨励して欲しい」ということだ。

休職中、当事者は、とかく「早く復帰して働かなきゃ」「休職中は同僚に迷惑をかけている」などという発想に陥りがちだ。これだと心と体の準備が不十分なまま復職し、また以前と同じような働き方を繰り返してしまうだけなのだ。

そんな発想を切り替えてもらうためにも、「仕事以外のことに夢中になって毎日を楽しんでもらう」ことが大切だ。それが、あなたの会社の社員が、あなたの会社の仕事で失った人生の彩りを取り戻すきっかけになるのだ。

どうか旅行に行ったり趣味を満喫することを奨励してほしいし、少なくとも人生をエンジョイしようとしている人に対して、怪訝な顔を向けることだけはやめて欲しい。

 

6.【復職とその後】新しい働き方を模索する時期

当事者へ:

治療とリハビリの甲斐あって、念願の復職を果たした際は、以下のことを覚えておいて欲しい。

まず一つ目、毎日の合格ラインを「会社に足を運ぶこと」に設定しよう。もちろん出社する以上は何らかの業務を任されると思うが、その出来不出来は一切気にしない事。出社一日前までは「オフィスという建造物に足を踏み入れること」自体ができていなかったのだから、毎日出社を継続するだけで自分を褒めてあげていい。

二つ目は「疲労」に関して。復職してすぐは、従来難なくこなしていた業務でも、とても疲労感を感じるだろう。例えば、「30分ミーティングに同席するだけで疲れる」とか、「資料一つ目を通しただけで疲れる」とか。

しかし、それを病気のせいにしてはいけない。多少のブランクも一因ではあるにせよ、健康な人でもMTGに出れば疲れるし、資料を読めば疲れるのだ。以前は気が張っていて鈍感だっただけだ。治療やリハビリを通して心身が自然な状態に戻っているんだから、一つ一つの業務で疲れを感じることは、「自然な状態を取り戻した」と認識しよう。

そして最後に、疲労を感じたら、それにふさわしい休養を取ろう。特に復職後すぐはオフィスにいるだけでも体の神経が張り詰めて疲れてしまうものだ。無理に「毎日行かなきゃ」と思うのではなく、疲れたら躊躇なく休みをとる習慣をつけよう。

風邪を引いたり、冠婚葬祭などのイベントがない限り有給休暇を取得することをためらう人は多いけど、そんなのナンセンスだ。「疲労」も充分休む理由になるし、「今日は気分が乗らない」ときも休めばいい。

復職後にそういった「自分の心身の状態に合わせて休暇を取る」習慣を付けておかないと、また従来の働き方に後戻りしてしまうので注意しよう。

 

関係者へ:

上述したように、最初の数週間は「毎日出社すること」に期待値を合わせて欲しい。

山積する仕事を前にすると、早く多くの業務を受け持ってほしいと思う気持ちはあるだろうが、その気持はぐっと我慢するべきだ。そもそも休職中はゼロだった戦力がゼロでなくなっただけでも前進なのだから。

もしここでマネジメント側が我慢できず拙速に業務量を増やしてしまえば、またゼロに戻ってしまうだけだ。賢明であろうとするならば、時には「待つ」必要があることに気づくはずだ。

ちなみに、僕の経験から言うと、メンタル疾患を乗り越えて復職したメンバーの中には、誰よりも時間効率の良い働き方を身につけてくれた例もある。そういった仕事のスタイルが組織全体の生産性を向上させてくれるのだ。

メンタル疾患で一度体を壊したメンバーこそが、最も業務効率化や生産性向上に関心が高い社員だ。なぜなら、二度と同じ辛い目に会いたくないし、仕事以外の生活に対する価値比重が高くなっているからだ。

そういった社員の働き方は、組織全体の生産性を牽引する。マネジメント側に「早く仕事を任せたい」という焦る気持ちがもしあったら、業務効率化に発想を切り替えてみてはどうだろうか。

 

最後に

以上が、病気の各プロセスごとに当事者と関係者に伝えたい僕からのメッセージだ。

病気の体験を綴るに当たって、自分自身の病気体験を振り返ってみた時、以下の2つが最も重要な局面だったと気づいた。

  • いかに早く病気(できれば未病段階)に自覚し治療を受けるか
  • どうやって復職という高いハードルを乗り越えるか

前者の局面で対処する智慧を備えていれば、大事には至らなかったはずだ。後者の局面では、会社に行けない自分を許せて楽になれたかもしれない。時計の針は巻き戻せないから、自分は救えなかったとしても、少しでも誰かの参考になれば。そう思って本記事を書いてみた。

この記事を通じて、現在治療やリハビリ取り組んでいる当事者と関係者が何らかの気づきを得てくれたら嬉しい。一方で、あくまでも僕個人の体験を通じて得た私見なので賛否別れる部分もあるだろう。色々とご意見やご感想を頂けると幸いだ。

 

番外編【僕が効果を実感した健康法5選】

著者プロフィール

中村 義之
株式会社YOUTURN代表。地方のアセットを活かして持続可能なライフスタイルとイノベーションを生みだすための起業インフラを創出中。メイン事業はU・Iターン特化の転職エージェント。地方のスタートアップで活躍したい人材募集中。