#3 パネルディスカッション(前編)鎌倉投信新井氏×福岡エイティーズ

 

株式会社グッドラックスリー

新井: まずは4社がどんな会社か説明してもらいましょう。

井上: グッドラックスリーは、創業から5年間、ゲーム開発や映像制作などエンターテイメント事業をやってきました。今ちょうど会社全体でブロックチェーン×エンターテインメントにシフトしています。

4月下旬にはブロックチェーンアプリの「くりぷ豚(とん)」、今夏には、ブロックチェーンを使った、メディアを支援する報酬システム「LuckyMe」をリリースする予定です。先ほど新井さんのお話にあったような地域経済やトークンエコノミーのようなものに繋がっていけばいいなと社内で議論をしています。

 

株式会社ホープ

新井: 有難うございます。次、時津さん。

時津: 株式会社ホープの時津と申します。当社の主なクライアントは、全国の自治体です。自治体の財政難という問題に対して、遊休スペースの収益化やコスト削減の提案を行い、自治体の財源を確保しましょうというビジネスモデルで事業をしています。

北は北海道から南は沖縄まで、どこのエリアの自治体でも私たちは地域戦略に左右されずアプローチをかけていくという非常にユニークな商材で、全国の自治体にサービスを提供しております。

新井: 上場企業で、鎌倉投信の投資先企業でもありますね。では次、春山さん。

 

株式会社ヤマップ

春山: 株式会社ヤマップの春山と申します。私たちは携帯電話の電波が届かない山の中でも、スマートフォンで現在位置が分かるというアウトドア向けのサービスを展開しています。登山・アウトドア領域をビジネス範囲としている背景には、「日本社会で最大の課題は体を動かしていないこと」だという私の問題意識があります。登山を通して都市と自然を繋いで、自分たちがどういう風土に生まれて、どういう環境に生きているのかを、登山・アウトドアを通して知る機会を提供したいと思い、事業を始めました。

2013年3月にサービスをリリースしまして、現在、アプリのダウンロード数が約78万件で、PV(閲覧数)は月間で1億弱です。国内の登山・アウトドア向けアプリサービスとしては最大規模になってきたのが、現在のヤマップの状況です。今メンバーは21人で、福岡と東京にオフィスがあります。

 

株式会社ボーダレス・ジャパン

田口: ボーダレス・ジャパンの田口と申します。僕らは社会問題にビジネスを通して取り組むことを専門にしている会社です。貧困や差別などの社会問題を解決するにあたって、ビジネスというものがツールとして使えると思っています。そういった社会ソリューションとしてビジネスをしている社会起業家たちが集まって、企業グループを構成しています。

現在、18社ありまして、日本は東京・福岡・大阪、海外では韓国・台湾・バングラデシュ・ミャンマー・ケニア・グアテマラ・トルコなど、様々な場所でそういった活動を行っています。色々な社会ソリューションを持った起業家たちがお互いに助け合う共同体をつくりたいと思っています。よろしくお願いします。

 

福岡で芽生える若い力

新井: こうやって改めてメンバーを見ていると、福岡で若い力が出てきているんだなって実感がありますね。

井上: この間、春ちゃんが「もっと新しい空気を呼び込まないとダメだ」と言ってました。この前、春ちゃんが、僕らの12歳下の26歳で優秀な経営者を発見したと言ってましたが、、僕らよりもう一段若いメンバーで登壇してみても面白いでしょうね。

新井: それぐらいの年齢層でもやっぱりいるんですか?

春山: います、います!AIで病理画像診断サービスを提供している九州大学出身の経営者がいます。先日、シリコンバレーの大会で優勝しているんですよ。

新井: その年齢層の社長は、ボーダレス・ジャパンの中にもいますよね。

井上: 社内にいますよね。広報活動をもっとしっかりしたらいいのに。

田口: 事業規模や社会性の割に知名度が低いとよく指摘をもらうのでもう少し頑張らないといけないですね。

時津: ホープに28歳の人事担当者がいるんですが、ブログの書き手として結構面白い記事を書くんです。東京の優秀な方がそのブログを読んで中途採用にエントリーしてくれたり、トロント在住の方がブログを読んで「会いたい」と言ってくれたりすることもありました。もっと広報を上手くやりたいですね。発信すればちゃんと見てくれる方がいるんだなと実感しました。

新井: やっぱり発信しないとね。だって、ボーダレス・ジャパンもホープもすごく価値があるしね。でも、そういう企業を探るのが僕らの仕事だから全部発信されちゃうと、つまらない部分はあるけれどね(笑)。「ホープって知らないでしょう?」っていうのが僕は楽しいわけですよ。時津さんが苦しんでいるときに投資を始めたしね。

 

お金は手段。金融とは「繋ぐ」こと。

時津: 弊社が下方修正を発表し、その翌期に赤字予算を組んだことは、基本的にステークホルダーの方にとっては好ましくない経営状況なんですよね。そういうタイミングで鎌倉投信さんから投資を頂いて「これから応援するぞ!」って言ってくれるのは、純粋にすごく嬉しかったですね。「それでいい」と言ってくれる株主がいることは、すごく有り難いなと思いました。

新井: 考え方の問題だからね。「株価が上がればいい」って考えている人がよくいるんだけど、違うんですよね。上がり続ける株なんてあり得ないわけですよ。そんな不自然なものは絶対に壊れていくから、今、アメリカのマーケットが急落するようなことが起こるんですよ。一つだけ投資の世界の話をしますと、「いい会社の株を安い時に買うこと」が成功の秘訣です。絶好調のときに買ってはダメです。絶好調なときに買ったら、それ以上の絶好調がないと株価は上がらないということなんです。

井上: 株が安いときに買おうという投資家がなかなかいないですね。ベンチャー企業が最もお金を調達したいタイミングって、一番経営がキツいときなんですが、そこで投資してくれる投資家ってやっぱり少ないんですよね。グッドラックスリーは未上場ですが、この五年間で、10億円ぐらいの資金調達を進めてきた過程で、150人くらいの投資家に接触しました。そこで気づいたことは、「新井さんはかなり特殊」ということです。「日本全国の良い会社を探すぞ。そして、増やすぞ。」っていうよく分からない経済性で動いているように見えます(笑)。

新井: そこはね、ちゃんと考えているんだって。僕はあくまでお金は一つの手段でしかなくて、その会社に必要なものを見極めて提供することを目的としているわけだよ。だからその手段はお金じゃなくて行動でもいいし、本来の金融の役割っていうのは、「つなぐ」ことですよ。

金融庁が掲げている事業性評価融資を実践していくために何が必要かを問われたときに、「お金を出す行為を1割にして、9割を相手に尽くすこと」とお伝えしたんです。「相手の企業のために尽くそう」と。尽くしてくれる人には高い金利でも支払いますよ。つまり、お金だけで選ばれる行為を自分たちがやるからいけないんです。「低いレートでないと貸し出せない」というのは自分たちの効率の問題だけれども、効率を追っても貸し出す先が全然ないんだから、そこを変えないといけないんです。だから、「たくさん無駄をしよう」って言うんですけど、数字だけの世界に生きてきた人たちにはなかなか分かってもらえません。

井上: そうですね。投資している人も本気度が高い人ほど、「何か手伝おうか」って言ってくれますね。鎌倉投信がホープに出資した後、企業価値を上げるために朝7時からホープで打ち合わせをしていたり、このイベントもホープだけではなく地域に貢献するために福岡エイティーズの4社で実施したり、新井さんの活動を通じてWin Winの広がりというか、経済圏ができていく感じがしています。

新井: それは共感資本なのか、信頼資本なのか、言葉はともかく、そうしたら社会が絶対に豊かになると思っているからやっているだけであって、僕はまっすぐなんだよね。もちろん、ビジネスモデルとして経済的に勝てるものを提供していかなければいけないというのは当然の話で、それはプロだからやるに決まっているわけですよ。では、どっちを取るんだって言われたら、やはり自分たちが掲げた社会に近づいていくことが大事だと思うんです。それはみなさんもそうだと思いますが、この5人に共通しているのは、「ブレない」、「頑固」ということですね。本当にそう思いますよ。

 

社会性と事業性の両立には厳しさが必要

井上: そう思いたいんですけど、過去、結構ブレそうになるときもありましたよ(笑)。ボーダレス・ジャパンが他の3社と違うところは外部資本を入れていないところだよね?

田口: 外部資本はゼロだね。資本を入れることで株主からの協力を得られるというメリットがある一方で、やはり一定の制約が生まれるのも事実。十分な借入ができるなら無理に外部資本入れなくてもいいんじゃないというのが理由の一つ。もう一つは、株式マーケットからの調達以外の方法を考えたいなと思っています。ビジネスにもソーシャルビジネスというのがあるように、投資家にも利益の最大化を求めるマネー投資家と、ソーシャルリターンを求める社会投資家がいる。そういう社会投資家と社会起業家たちをつなぐ「社会的投資」の仕組みをどう作れるか模索しているところです。

井上: ボーダレス・ジャパンはグループ内で経済が回っているから良いなと思うんです。ホープは上場しているので業績開示が必要で、グッドラックスリーもヤマップも資金調達をしているので数字のプレッシャーはそれなりにある。ボーダレス・ジャパンが一番マイペースなのかなと。幸福度指標を測ると、一番高いんじゃないかって思うんですよね。

新井: 僕もね、そう思っていたんだけれども、違うんだよね。マイペースじゃないんだよね。ボーダレス・ジャパンは、社会性と事業性の両立を、ちゃんと仕組み化していますよね?

田口: 僕らはすごく厳しいですよ。それは人間に厳しいという意味ではなくて、社会的な事業となると売上や利益を出すことを超えた話なので、やはり厳しさが増すんですよね。どういう稼ぎ方をしても良いわけではなくて、そのやり方にはすごくこだわりがあります。

例えば、僕らの事業の一つに通販事業があるんですが、ミャンマーの貧しい農家さんからハーブを仕入れて販売しています。それこそ1キロでも多くのハーブを仕入れるという使命を背負いながらやっています。

一方で、どんな稼ぎ方でも良いというわけではなくて、僕らの会社にはエコロジーファーストという考え方があります。普通の通販ではチラシやDMをバラ撒くんですね。しかし、売上を上げるためにチラシをバラ撒くのは、環境負荷がかかるので「NO」なんですよ。そういった制約を設けながら成果を出すというのは非常に厳しいことです。

井上: 新井さんが仰った「頑固」、「ブレない」というのを今の話が体現していた気がしますね。

新井: そうそう、感じるよね。それと、今日ヤマップの春山さんの話を聞いて、筋が通っていて感動したよ。春山さん、何を考えて経営しているのかをせっかくだからぜひ。

 

繋がりと共有でつくる地域経済

春山: さっきの新井さんの話の流れでお話すると、20代から40代の働き盛りの僕らが、後世にどういう仕事やシステムを残すかって非常に大事だと思っています。

60代から80代の僕らの親世代がつくってきた大量生産・大量消費の社会から、今は良く言えば成熟社会に向かっています。正直に言うと、衰退社会に向かっているかもしれない。そういう端境期にあるので、小さくても良いからロールモデルとなるものを僕らの世代でつくれたら、その小さな石が数十年すれば大きな石になっているんじゃないかと思っています。

ただ、これを一人でやっても社会にインパクトは出せないので、やはり経営者同士や企業同士、みんなで共有する場を、福岡という小さな都市ではあるけれどもつながっていく必要があると思うんですよね。その流れの中に、ローカル資本主義だとか、地域トークンだとかの循環が生まれてくるのではないかなと。でも、つながっていないと何も生まれないですよね。

新井:そうですね、やはり繋がっているから、色んなことを共有しながら前に進めることができるんですよね。

自分たちはよく「ソーシャル・ファイナンス」とか言われるんですけれども、ソーシャルファイナンスの人たちが本当に「ソーシャル」になるためには、どういう条件なのか示せればいいなって思うんです。

金融機関っていうのは、アンダーグラウンドで1対1で条件を決めていくんですよ。それってソーシャルじゃないって僕は思っていて、「オープンにしようぜ」っていうのを今年、東京でETICという団体と一緒にやっています。「誰かがお金を出す」ではなくて、みんなオープンにして、みんながそれに協力をして、その中で企業さんが好きなものを選び、自分たちがやりたい形でやっていくという社会をつくらなければならない。そのように思って活動をしています。それはもちろん、東京だけでなく福岡でも、地方の金融機関の方も一緒になって共通のプラットフォームをつくって、みんなが色んな形で調達できる仕組みをつくっていきたいなと思っています。

 

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著者プロフィール

中村 義之
株式会社YOUTURN代表。地方のアセットを活かして持続可能なライフスタイルとイノベーションを生みだすための起業インフラを創出中。メイン事業はU・Iターン特化の転職エージェント。地方のスタートアップで活躍したい人材募集中。