「東京のスタートアップで上場を果たした起業家たちが、なぜ続々と福岡に移住しているのか?」

取締役として前職を東証マザーズに上場させ、その後福岡で株式会社YOUTURNを起業した中村は、その体験はごく個人的なものだと思っていました。

しかし、中村は複数の「同じように東京で上場を果たし、福岡に移住した起業家」と出会うことで「連続起業家を惹きつける福岡の何かの波」の存在を感じ始めます。

 

「福岡を選んだのは直感。フラットに見て最高の街」と語る、株式会社エスエルディーの青野氏。

福岡出身者ではないものの「日本で探しても他にない。ロジカルに考えると福岡を発見した」と語る、株式会社mellowの粕谷氏。

 

彼らを惹きつける「今、福岡に行くべき理由」とは何なのか。そして福岡移住で感じたデメリットなども赤裸々に語ります。

※この記事は、2018年5月11日に株式会社YOUTURN主催でダイアゴナルラン東京にて行われたイベント『上場を果たした連続起業家が、なぜ福岡に移住するのか?』を元にしています。

 

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(スピーカー)
◇柏谷 泰行 氏
株式会社mellow 代表取締役
2011年(株)イグニスに参画。取締役として数々の新規事業を成功させ、2014年に東証マザーズに上場。2016年に取締役を退任し、サラダのフードトラックでの修⾏を経て株式会社mellowを創業。事業立ち上げのスペシャリスト。

◇青野 玄 氏
株式会社エスエルディー 元代表
2004年(株)エスエルディーを創業。2005年、渋谷区神南に『kawara CAFE&DINING 神南本店』をオープンする。以降、都市部を中心に主にカフェダイニング業態の店舗を展開。2015年3月にはジャスダックに株式上場を果たした。

◇中村 義之
株式会社YOUTURN 代表取締役
2010年(株)みんなのウェディングに取締役として創業に参画。2014年、事業本部長として会社設立から3年半で東証マザーズに上場。2016年、株式会社YOUTURNを創業。人材、農業、ヘルスケアなど幅広い事業を立ち上げ中。

<モデレーター>
◇高尾 大輔
ベンチャー企業の幹部採用支援に特化したプロコミットにてコンサルタント、事業責任者を務める。2018年、株式会社YOUTURNにキャリアコンサルタントとして参画。(国家資格キャリアコンサルタント)

 

なぜ福岡を選ぶのか

高尾 大輔(以下、高尾):まず、皆さんへの最初の質問として「なぜ福岡なのか」を聞いてみたいと思います。皆さん東京で色々な経験をされて、次のチャレンジで福岡を選んだわけですが、そもそもなぜ福岡なのでしょうか?

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▲左から株式会社エスエルディー元代表 青野氏、株式会社YOUTURN 高尾、株式会社mellow代表取締役 柏谷氏、株式会社YOUTURN代表取締役 中村

中村 義之(以下、中村):僕は出身が福岡だからという理由ではなくて、元々郷土愛が強い人間でもないんです。

では、なぜ福岡を選択したのかですが、前職で上場と同時に病気になって、その病気を療養しながら自分の人生を考えたときに、やはり次も起業したいなと考えたんですね。病気するほど働いたけど、素直に次も起業でチャレンジしたい。でも、二度と病気にはなりたくない。

最初は自己資金で色々なビジネスの可能性を模索しながらやっていこうと思っていたので、生活コストが低い地域を検討しました。且つ、自分の地縁があって一定の規模の都市、という観点で絞り込むと、大学時代に過ごしたつくばか、福岡の2択になりました。

結果的に福岡を選んだ理由は、福岡は行政が主体になってスタートアップを支援していて、起業しやすい街になってきていること、また、地理的にもアジアに近い立地は面白いなと思ったことが理由です。

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▲株式会社YOUTURN代表取締役 中村

高尾:病気をしたと言っていましたが、もう二度と東京はないなと考えますか?

 

中村:そうですね、とは言っても、福岡での起業はちょっと難しいかなとも思ったんですよ。スタートアップとかIT系の人材が東京と比べてすごく少ないんです。やはりヒトもお金も東京に集中しているので、成功確率は東京のほうが高いんじゃないかなと思います。

一方で、本来インターネットなどのテクノロジーを駆使すれば、場所は関係ないはずなので、その非対称性を解消できたら面白いなと思ったんですよね。

 

高尾:なるほど。青野さんは東京で起業されて上場まで果たされたわけですが、この度なぜ福岡なんですか?

 

青野 玄氏(以下、青野):中村さんとは違って、直感ですね(笑)。前職では仙台から沖縄まで、地方にも直営店を展開していて、出張で全国各地に行く機会があったんですが、地元であるというバイアスを差し引いても、フラットに見て福岡が住む上では最高の街だなと思っています。単純にそれだけで、僕の場合は行ってから何をするかを考えているという順番です。

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▲株式会社エスエルディー元代表 青野氏

高尾:なるほど。生活するにはすごく良い環境だと。色んな地域を見た上でもやはり福岡がいいなと思われたんですね。事業的な視点ではいかがですか?

 

青野:まさにこれから立ち上げていくタイミングなので、確定的なことは言えませんが、福岡であれば、「東京でやっときゃよかった」というような後悔はおそらくないと思いますね。起業とはそもそも大変なことなので、東京か福岡かという差が与える影響は僅かしかないと思っています。

 

高尾:実際に東京で事業を成功させた青野さんが言われると説得力がありますね。有り難うございます。この3名の中で唯一福岡出身ではない柏谷さんは、なぜ福岡を検討しておられるんですか?

 

柏谷 泰行氏(以下、柏谷):僕は就職したときからベンチャー企業で、25歳のときに先輩たちと一緒に会社を立ち上げました。28歳で上場したんですけども、とにかくビジネスの可能性を見つけたら放置できないんですよね。単純に、福岡が街としての可能性が一番あったという、本当にそれだけの理由です。

理由を挙げればキリがないんですが、やはり女の子がかわいいとか(笑)、コンパクトシティで自然と都市との距離が近いとか、空港の立地が良いとか、アジアとの距離とか、若い人が集まってきている街だとか。さらに、行政に先見性と行動力がある。日本を探しても他にないですよね。なので、結構ロジカルに福岡の可能性を感じたのが発見のステージですね。

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▲株式会社mellow代表取締役 柏谷氏(中央)

中村:それは、いつ頃発見されたんですか?

 

柏谷:2年前ぐらいですね。最初は、東京でフードトラックの事業を立ち上げたんですが、その後さらに拠点を増やすときに、当然福岡だよねと。

実際に福岡に移住している前職の先輩に福岡を案内してもらいました。それまで旅行でしか行ったことがない場所で、ビジネス的にもどう考えてもポテンシャルがあるということぐらいで、何の愛もない状態だったんですけど、実際に先輩に紹介してもらった人達が生理的に好き、みたいな(笑)。感覚的なんですけど、会う人会う人みんな良い人で、それで感情的に、直感的に、ここでやりたいなと思いました。

 

中村:すごく嬉しいですね。その直感をあえて言語化すると、どういうところがいいなと思われますか?

 

柏谷:何となく、心を開いてくれるスピードが早いなと思いますね。お酒の場ということもあったかもしれませんが、気持ちのいいコミュニケーションをする人が多いなという印象です。

 

高尾:人の魅力を感じられたんですね。

 

柏谷:そうですね。

 

福岡のデメリット

高尾:こういうお話を伺うと、「福岡すごいぞ」「可能性があるぞ」と言いたがっているように思われるかもしれませんので、だからこそ敢えて、福岡のデメリットを起業家それぞれの視点で伺いたいなと思います。

 

中村:先程もお話ししましたが、福岡のベンチャー企業の経営者が異口同音に言われるのは、エンジニアや経営人材、スタートアップで働いた経験のある人材の数が東京と比較するとどうしても少ないということです。

今、福岡ではスタートアップが増えていますが、これからスケールさせていく段階になったときに、そういった課題解決人材がより多く必要になってきます。そのリクルーティングに苦労されている企業は多いですね。

 

高尾:私も福岡のベンチャー企業の経営者と話をすると、本当に口を揃えていわゆる課題解決人材や、経営者候補になれるような人材がいないと言われますね。そして、そういう優秀な人は大体東京にいるよねと。起業するといった文脈では人材の領域でデメリットがあるということですね。

柏谷さんは、福岡で事業を検討している中でデメリットに感じることはありますか?

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▲株式会社YOUTURN 高尾

柏谷:結構考えたんですけど、全然ないですね。1〜2年あれば課題解決人材は機会さえあれば育ちますし、育て方の問題もあると思います。人材不足が問題というよりは、人材育成や今ある会社の魅力が低いから集められていないだけじゃないかと思います。

 

高尾:そういう育成ができる経営者が増えていけばいいのではないかということですね。

 

柏谷:そうですね。若い人はたくさんいるので、新卒で採用して頑張ればいいかなと。

 

中村:柏谷さんは上場まで果たした経営経験があるから、見えている部分があると思うんですよね。そういう方が福岡に来ていただいて、人材を生え抜きで育てるということはぜひやって頂きたいです。

 

高尾:そういう意味でも、東京で成功体験を積んだ経営者が福岡で事業をやることはすごく意味がありそうですね。青野さんはいかがですか?福岡で事業をやることのデメリットについて。

 

青野:今のところはほとんど感じていないです。あえて一つ挙げるとしたら、コミュニティが狭いことですね。いい意味でも悪い意味でも義理とかを大切にするので、そこを踏み外さないように気をつける必要があります。「昨日、あの辺を歩いてたよね?」って言われることもありますし、そこまで分かるんだなと(笑)。

 

高尾:コミュニティが狭い分、情報が知らないところで回るんでしょうね。私も地元出身ですが、人懐っこい人が多いですし、お節介も多いですよね(笑)。中村さんはすでに福岡で事業をしていて、そういった土地柄について何か感じることはありますか?

 

中村:青野さんと同じように、ウェットなコミュニティだなと感じますよ。中立的な意味で「ウェット」だと感じていまして、いい意味にもなれば、悪い意味にもなると思います。ただ、今のところネガティブな側面は感じていないですね。

逆に、ポジティブな側面は感じています。私の事業はまだ立ち上げたばかりで何も実績がないのに、多くの方に応援して頂いています。挑戦する人に男気を見せてくれるというか、そういったポジティブな意味でのウェットさを今は感じていますね。

 

高尾:ウェットであるがために協力者が増えやすいというのを感じているんですね。

 

中村:そうですね。「街を良くしよう」という合言葉を言えばみんな応援してくれます(笑)。みんな、福岡の街が好きなんです。

 

柏谷:僕は、フードトラックを置かせて頂く不動産ディベロッパーの方々と話す機会が多いのですが、福岡では経営者かなって思うぐらい自分の担当しているビルやエリアを盛り上げるために動いている人がいました。何回か行くだけで、街をよくしようと思っている人がたくさんいるんだなと感じますね。

 

福岡で伸びている事業や東京との情報格差

各起業家たちが福岡に惹かれた理由や自身の経験に基づいたメリットデメリットを語ったイベント前半。

 

イベント後半記事】では、さらに注目の話題に話が及びました!

会社を上場させた経験は価値観に影響を与えたのか?

福岡で伸びている事業は?

気になる東京との情報格差はあるのか?などなど……。

ぜひ後半記事もご覧ください!

 

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著者プロフィール

YOUTURN編集部
YOUTURN編集部
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