~ふとした芸人のつぶやきから広がる妄想~

先日お笑い芸人「千鳥」がTVでふとこんなことを漏らしていました。

「お笑い界は上が詰まっとる。ダウンタウンさんやとんねるずさんの次にはチュートリアルさん、ブラックマヨネーズさん、バナナマンさんちゅう40代が控えとる。ワシらはその次じゃぁ」

と。言葉はそのままではないですが、なんとなくこんな口調で……(笑)。
 
そういう千鳥は38歳。それだけお笑い業界が発展し、人材の層がぶ厚くなっているということを表すひと言でした。

いまほどお笑い芸人になるということが社会的に認知されておらず、芸人を目指す人の数が少ない頃から、お笑いの道を極めんとチャレンジした先駆者たちがその道を拓いてきました。そして、それに憧れる第2陣、第3陣が続いていく。

 

お笑い業界が産業化する上で、お笑い芸人を大量に養成し輩出した吉本興業の功績は本当に大きいんだなぁと。そして、いまお笑い芸人の世界では業界を代表する地位まで登り詰めるのは、とても長い道のりなんだなぁと、こんなことをTVを見ながらぼんやりと考えていました。
 
そこからさらに考えを巡らせてみたのですが、いまお笑い芸人の業界で現役でトップにいる50代のとんねるずやダウンタウンは、38歳の千鳥よりも若い20代、30代でお笑い業界を切り拓く活躍をしてきたと想像できます。

千鳥が30代で得たものと、とんねるずやダウンタウンが30代で得たものは大きく違い、また40代でこれから千鳥が得るであろうものと、とんねるずやダウンタウンが40代で得てきたものは、また大きく違うのだと思います。
 
さらに、もしこれからとんねるずやダウンタウンが新しいことにチャレンジしようとすれば、豊富な経験と地位、そして財産を得た状態でかなり高い位置からスタートできる、しかもまだ50代という若さで。これがまさに先駆者として業界をリードしてきた人たちが得ることのできる先行者メリットなのだと感じます。

 

ふとしたお笑い芸人のつぶやきから、「業界の発展の構造」を垣間見た瞬間でした。

実はこのお話、キャリアを考えていくうえで非常に参考になります。
業界の発展の構造のなかで、どのタイミングで参画したかで得られるポジションが変わってくることを大いに示唆しています。
 

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~お笑い芸人の業界と東京のベンチャー業界を比べてみる~

芸人業界に思いを巡らしながら、東京のベンチャー業界に思いを馳せてみると、いくつか共通する点が見出だせます。

およそ20年前、渋谷のビットバレー(※1)から始まった東京のインターネットベンチャー業界。

1990年代の後半~2000年にかけて楽天、カカクコム、サイバーエージェント、DeNA、エムスリー、ミクシィなど、日本を代表するメガベンチャーが次々に立ち上がりました。

※1……渋谷を中心としたベンチャー・スタートアップコミュニティ

 

▼日本のメガベンチャーの創業年次
1997年:楽天、カカクコム
1998年:サイバーエージェント
1999年:DeNA
2000年:エムスリー、ミクシィ

 

いまや日本のインターネットベンチャー業界は、キャリア形成の観点からも「成長」、「チャレンジ」、「自己実現」の文脈で、多くの優秀な人材が集まる業界へと発展しています。

2013年に創業したメルカリが、5年後の2018年に超大型の上場を果たし、日本のスタートアップシーンに大きな影響を与えたことは記憶に新しいところです。
 
メルカリの経営陣は30代~40代が中心のようで、20代の頃からベンチャー・スタートアップの可能性に魅了され、いち早く環境に飛び込み経験と実績を積んだ人たちが、これまでの経験を携えてさらなる大きなチャレンジをするためにメルカリに集まっているようです。世に言われる「2周目、3周目人材」ですね。
 
東京のメガベンチャーは30代で創業し日本のベンチャー業界を牽引してきた人たちがいま50代を迎えています。楽天の三木谷社長、DeNAの南場社長、エムスリーの谷村社長などです。
 
それに続く40代、30代が次のメガベンチャーを創るべく、ベンチャー業界の中核企業をリードしています。さらに成長環境は広がり、20代の若手ビジネスパーソンがそのもとで経験と実績を積んでいます。

東京のベンチャー業界はもはや一過性のブームではなく、しっかりと業界が発展していく構造を創り上げたのではないでしょうか。

 

東京のベンチャー業界の中心でその発展をリードしてきたいまの50代の経営者たちは、現在では大きな影響力を持っています。

そしてお笑い業界同様、40代の事業家の層も20年前とは比較にならないくらい厚い。それに続く20代~30代もかなりの数の人材が東京のベンチャー企業でチャレンジしています。

 

~業界が発展していくほど人材が混み出す~

お笑い業界の話と、東京のベンチャー業界の話。この2つに共通するのは「発展を遂げた業界では競争が激しくなり、キャリアにおいてもレッドオーシャン化する」ということです。

 

参画してくる人数がまだ少なければ「できる人」よりも「やりたい人」にチャレンジの機会が多く巡ってきますが、参画する人数が多くればなるほど、「できる人」の総数が多くなり「やったことない人」「まだいまはできない人」に仕事が回ってくる機会は減ってしまいます。

10年前は30代のベンチャー未経験者でもポテンシャルで採用されていました。しかしいまではベンチャー・スタートアップ企業から30代の求人を依頼されるときには、ベンチャー企業での経験と実績を求められる傾向が強くなってきているように感じます。20代でベンチャーに挑戦してくる人も増えていますので、未経験者であればできるだけ若い人材をという優先順位になっても来るでしょう。
 
業界が発展していく過程では、その業界内で実績を出す人の数も増えてきます。それに伴ってその業界で言われる「実績」というもののレベルもどんどん上がっていきます。発展途上の段階ではファインプレーだった仕事が、発展していくとすでに誰かがやった仕事になり、発展を遂げた業界では「目立った実績」として認められるには、かなり高いレベルのものをアウトプットしなければならなくなります。お笑い芸人の世界でも同様のことが起こっているように思います。
 
もちろん、発展を遂げた業界に身を置くことは自己成長において非常に有意義な機会になります。先駆者が切り拓き、その後に続く優秀な人材が発展に寄与するなかで様々な成功事例や失敗事例が蓄積していきます。
 
そしてそれを経験した優秀な人たちのもとで経験が積めるというのはビジネスパーソンとしての成長において得難い環境となるはずです。この観点では、キャリアにおける自己成長を目指す方にとっては、東京のベンチャー業界にチャレンジするという選択肢はいまの日本では有意義な環境とも言えます。
 
一方でこのようなお話もあります。以前、ソニーに勤めておられる40代前半の方にお話をお聞きしました。社会人20年目の方です。

「20年前、憧れのソニーに入社しました。むかし、創業者と一緒にソニーを創ってきた50~60代の先輩から武勇伝を聞くと、自分が憧れていたソニーそのものの世界がそこにあり、本当に興奮しました。自分もそういう仕事がしたいと思ってソニーに入社したのですが、すでにソニーにはそれと同じ経験が出来る環境はありませんでした。」

と。「あの人達のようになりたい」と思って参画しても、そこにはその人達と同じ経験ができる環境はもはや存在していない、というお話には説得力がありました。

 

~東京で自己成長を果たしたビジネスパーソンが抱えるジレンマ~

「まだまだ優秀な人たちのもとで経験を積みたい」という想いをお持ちの方は、東京のベンチャー企業の今後の発展のなかで有意義な経験を積まれると良いと思います。

一方で、東京で一定の成長過程を経験され、実績を出して来られた方から「次にどのようなキャリアを描けばよいか」というご相談に乗ることが増えてきました。お笑い芸人の業界でいう「千鳥層」なのかもしれません。
 
その方々はこうおっしゃいます。

「東京でも成長環境に恵まれ、できることも増えてきました。いまは自分が何を得るかという成長軸よりも、これまでの経験をどこに向けて発揮するかを考えるようになっています。成長してできることが増えたといっても、東京には自分と同じような能力を発揮できる人材はたくさんいます。このまま東京で埋もれていくのか、それとも自分の経験や能力に希少性を感じてもらえるところで貢献するのか。できれば後者で自分のオリジナリティを発揮できたらと思うが、そんな環境がどこにあるのか。」
 
こういう悩みを抱えておられる方は、インプット型の成長時期を終え、2周目の成長段階と言えるアウトプット型の貢献意欲へとキャリア形成の軸がシフトしてきたタイミングを迎えているようです。非常に優秀な方々ですが、自分の経験や能力が特別なものと感じられず、埋もれてしまうのではと考えてしまうのは、ひょっとすると肌感覚で「東京は人材が混み合っていて、上が詰まっている感」を感じておられるのかもしれません。

 

~福岡のベンチャー・スタートアップという新たなキャリアの入口~

このような感覚に近いものをお持ちの方は、一度「福岡」という都市に目を向けてみると可能性の広がりを感じるかもしれません。

私は、現在の福岡市を中心としたベンチャー・スタートアップコミュニティを、20年前の東京のビットバレーに近いものを感じています。
 
福岡市が推進するベンチャー・スタートアップ支援、東京のベンチャーコミュニティの発展という先行事例、また東京のメガベンチャー企業の福岡拠点の展開などが追い風となり、東京で20年かかった業界の成長を、おそらくそこまで時間をかけず10年くらいで急発展していくのではないかと考えています。
 
すでに10億~数10億円の売上のトップラインを作れるベンチャー企業も増えてきており、ここから人材の集積が加速することで、その勢いは加速度的に高まるでしょう。

一部の感度の高いビジネスパーソンは、次のチャレンジの場を福岡に定めており、起業家として、経営幹部として移ってきています。
 
そして、福岡の起業家たちも事業拡大をこれまで以上に志向しており、100億円、1000億円企業を目指す戦略を立て始めています。口で言うだけでなく、実際に福岡の地で事業の0→1、1→10フェイズを創り上げ、その先の事業規模拡大を目指すに必要な足場を固めてきました。

この背景からも、ここから100億円、1000億円企業を目指すうえで、東京でそのフェイズの事業成長を推進したことがある方、成長の景色を見たことがあるという方への人材のニーズが急速に高まってきています。

 

おそらくこの数年、具体的にはここ3年~5年で福岡のベンチャー・スタートアップシーンを牽引するタレント、「福岡の起業家、事業家といえばこの人たち」という顔ぶれが揃ってくるのではないでしょうか。そして、10年後、20年後に福岡のベンチャー・スタートアップが拡大し・成熟してきたときには、ここ3年~5年で参画して業界を牽引した人たちが、大きな影響力を持つポジションに立っている姿を想像しています。

 

お笑い芸人の業界でいう、とんねるずやダウンタウン。

東京のベンチャー業界でいう、楽天三木谷社長や、DeNA南場社長、サイバーエージェント藤田社長、またその脇を固める経営幹部の方たち。

こういった影響力を持つ人が、福岡のベンチャー・スタートアップの発展の先に出現してくるだろうと思います。

 

~2周目、3周目の成長機会をどこで得るかを考える時代に~

もちろん、福岡が勝手にそうなっていくのではなく、その未来を予測して当事者として福岡のベンチャー・スタートアップシーンの創り手となり牽引していく人が増えるからこそ、そういう未来が拓ける可能性が高まるのだと思います。
 
10年後の日本において、福岡という都市がどのような都市になっているかは、今の段階で明確なことは言えませんが、東京一極集中社会への問題提起、地方創成の流れ、人生100年時代を見据えた生き方・働き方に対する価値観の変化などを考えると、10年後の日本が今と変わらない姿のままであると予想するほうが難しいかもしれません。
 
この変化の先に、東京以外の都市で日本経済の新たな役割を担う都市が存在していることを想像すると、福岡という都市は十分その候補となりうるポテンシャルを秘めています。

もともとYOUTURNは、東京で働く福岡出身のビジネスパーソンが、自己実現を求めて福岡に戻るという導線を支援しようと事業をスタートしました。もちろんいまでもその活動に力をいれていますが、実際に活動をしてみると、福岡が地元でない東京のビジネスパーソンから福岡でのキャリアの可能性についてご相談される機会が多いことに驚いています。
 
いまの福岡は、東京で数10億円から100億円までの事業成長フェイズを経験されたビジネスパーソン、100億円から数100億、その先の1000億円規模までの事業成長フェイズを経験されたビジネスパーソンが強く求められています。

東京ではこの20年で売上1000億円を超える成長を遂げたメガベンチャー企業は複数あり、100億円~数100億円という規模だともっと多くのベンチャー企業が存在しています。それだけその成長過程を経験した人材が、この20年間で数多く生み出されたということになります。
 
そのような成長環境で経験を積んだ方は、もっとアーリーステージを経験したいという思いから、いわゆる「2周目人材」としてさらに規模の小さいスタートアップ企業にCXO(※2)候補として転職するという流れができてきました。

※2……CEO、CFOなど各担当領域における最高責任者の総称

 

古くは、日本の大企業に優秀な人材が集まり、次に外資系企業、コンサルティングファームや外資系金融機関などに優秀な人材がキャリアを求めて移っていきました。そしてここ5年ほどでその行き先が東京のベンチャー・スタートアップ企業に移ってきましたが、いまその東京のベンチャー業界では人材が混み合って来ています。
 
東京で自己成長を果たしたビジネスパーソンが次に力を発揮でき、2周目の成長機会、3周目の成長機会を手にすることができる環境がどこになるのか、注視していきたいところです。

東京で4番手、5番手くらいのタイミングで参画して機会を見出しに行くのか、福岡に2番手のタイミングで参画して機会を見出しに行くのか、どちらを選ぶかで5年後、10年後に得られるものは違ってきそうです。
 
YOUTURNはこれから5年、10年と福岡のベンチャー・スタートアップ業界の発展、そのなかで展開されるビジネスパーソンのキャリア形成・成長機会に注目しながら、福岡という都市が遂げる発展を見届けていきます。活動を通じてさらに蓄積していく知見を、東京で活躍されるビジネスパーソンに発信し、新たなキャリアの機会の提供に取り組んで行きます。
 
「福岡という都市でのキャリアの可能性について話を聞いてみたい」という方は、ぜひYOUTURNにご相談ください
 

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著者プロフィール

高尾大輔
高尾大輔
福岡県生まれ、東福岡高校出身。北海道大学を卒業後、住宅関連のベンチャー企業での営業・新規支店立ち上げを経験後、リクルートエージェント(現リクルートキャリア)に転職し人材紹介コンサルタントとしてのキャリアをスタート。ベンチャー・スタートアップ企業の幹部採用支援に特化したプロコミットにてコンサルタント、事業責任者を務め、2018年に独立。2021年 株式会社YOUTURN 代表取締役就任。(米国CCE,Inc. GCDF-Japan キャリアカウンセラー)

<受賞歴>
ビズリーチ主催「ヘッドハンター・サミット」年間最優秀賞・優秀賞受賞
リクルートキャリア主催「MVA(Most Valuable Agent)」最優秀賞受賞・優秀賞受賞