「パタゴニアが解決するビジネス」を『持続可能なモノづくりのカギは「透明性」』であるという観点でお送りしたイベント前半

後半では、スピーカー達による

「これからのモノづくりに求められるものとは?」「企業としての思想の発信の重要性」

などの議論が行われた内容をお送りします。

 

またあわせて参加者から

「ソーシャルビジネスが目指すスケールとは?そもそもスケールを目指すのか?」「何かを広く発信していくために必要なことは?」

など、率直な質問も飛び交いました。

 

※この記事は、2018年5月30日にFukuoka Growth Next主催で行われたスタートアップの育成セミナー「持続可能な資本主義:環境編〜環境を犠牲にして成り立つ経済の、次へ〜」を元にしています。

福岡移住でキャリアアップを実現する方法は?

言いたいことを主張する会社

新井 和宏氏(以下、新井) 僕がパタゴニアさんがすごいなといつも思うところは、言いたいことをちゃんと主張している会社だということですね。

パタゴニアさんは自分の作ってるジャケットを買わないでくれ、みたいな広告を出されていたりするんです。ましてや辻井さんはパタゴニアの日本支社として、先程の話(※1)で「石木ダムは本当に必要か」と問う広告を全国紙に出したんですね。

※1……前編で言及した「石木ダム」。パタゴニア日本法人は石木ダムの作り方を問い直す慈善団体を支援している

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▲(左)パタゴニア日本支社支社長 辻井 隆行氏、(右)鎌倉投信株式会社取締役資産運用部長(当時) 新井 和宏氏

新井:多くの会社は、自分たちの商品を売りたいから主張しますが、辻井さんのところは違った。しかもアメリカの本社役員の人から連絡が来て「日本に会社を作ってよかった」と。

また鎌倉投信の投資先のサイボウズも今の働き方改革の有り様は僕らが思っている働き方改革ではありませんという広告を全国紙に出しました。

 

辻井 隆行氏(以下、辻井):新聞広告って定価とディスカウントがあるんですが意見広告って定価なんですよ。ディスカウントしちゃうと意見に肩入れしたとかなっちゃうから。

 

新井:意見広告を出している企業は、僕はすごい、素晴らしいなと思う。

 

思い出をたくさん詰めていく

新井:もう一つこれもパタゴニアさんから学んだのですが、やっぱり環境負荷をかけないために何がいいかといったら長く使うってことだと思うんですよ。

当然ながら物をリサイクルしていく、でまた使うっていう方法もあるわけですよね。ただそこには必ず環境負荷がかかっていて、その負荷の度合いは原料に近い物に戻れば戻るほど大きくなります。

だから今の形の物をそのままできる限り長く使っていこうとしない限りは実は持続可能ではないんですよね。

 

辻井:知らない方が着た古着を買うのに抵抗がある方もいますよね。。でもたとえば「思い出が詰まっていたほうがいいな」とかであれば、「おばあちゃんが着てた服をリメイクしたら可愛くなった」とかそういう体験のほうがいいかなと。

新品を買うのは環境負荷だから、と考えすぎると辛いですからね。自分にとっていい体験ができるように。

 

新井:リメイクいいですよね。

 

辻井:パタゴニアのお客様でパタゴニアのサーフィン用のショーツをディスカウントショップで買ってそれを20年履いてくださっている方がいて。もうボロボロになってるわけですよ。で、お尻が破けたところにビーチパラソルのあのシマシマのやつを縫い付けて「オシャレになったなー」とか言って本当に楽しそうで。「俺はこれを履いてバハマにも行ったし、アフリカにも行ったし」とか言ってもう思い出が詰まってるんでそういうのを広めていけるといいのかなという感じがして。

 

春山 慶彦氏(以下、春山):ちなみに僕はパタゴニアのガイドパーカーをもう14年ぐらい大事に着ています。なんで手放せないかって言うと、アラスカに留学した時にイヌイットのおばあちゃんから狼の毛をもらって自分でそのパーカーの袖に縫い付けたんです。そうやって、手間というか自分のワンアクションが入ると、もう既成品じゃないんですよね。一緒に過ごしてきた相棒というか。ボロボロだけど未だに捨てられないです。

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▲株式会社ヤマップ代表取締役 春山 慶彦氏

春山:既製品であったとしても、自分で何かを加える・ひと工夫入れることは、モノづくりの一端に関わる楽しいアクティビティのはずです。そのひと手間がモノへの愛着を育てると思うんです。今は、モノを使う方も、作る方も、原材料を育てる方も、分断されてしまっていて…。消費者が生産者に、作り手もユーザーに、という構図をもう一度取り戻さないといけないと思ってます、今の時代に合う形で。

 

100%オーガニックへのこだわり

新井:もうひとつちょっとだけお話をするとうちの投資先でIKEUCHI ORGANICという、オーガニックコットンにこだわってやっている会社があります。そこの福岡ストア店長の井上さんが今日来ているので一番こだわっている部分を伝えていただけたらと思います。

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▲IKEUCHI ORGANIC株式会社 井上 夏樹氏

井上 夏樹氏:うちの会社は愛媛県の今治タオルのメーカーです。オーガニックにこだわり最小限の環境負荷と最大限の安全をテーマにタオルを作っています。風力発電の電力を使用したり、オーガニックコットン100%の原料を使ったりしてタオルを作っております。

 

新井:100%オーガニックコットンというタオルはなかなか無いですね。縫い糸自体をオーガニックコットンにするのは難しいんですよ。またコットンヌーボーという商品には発売された年が縫い付けられているんですね。ワインのボジョレーヌーボーと同じように、コットンの質の違いを毎年楽しんでいただけるように作っている製品になっています。

 

辻井:コットン自体は「食べられない野菜」に分類されるから工業製品じゃないという話になるじゃないですか。でもタオルは工業製品とみなされるから、工業製品であればタオルは統一された均一な品質がいい、となるんです。

でもIKEUCHI ORGANICは違う。それぞれのタオルが均一な品質でなくても「それは個性だ」と。きゅうりだってまっすぐなものだけでなくまがっててもいいじゃないかというのを引き合いに出すんですよね。僕もすごいいいアイデアだなと思った。

ただ世界中のコットンの中でオーガニックコットンは0.7%しかないと言われているんですよ。有機で栽培するとロングランで経済的にも合理性があるっていうことがだんだんわかってきていますがオーガニックコットンはなかなか広まらないですね。

 

いい循環の一部になる

春山:次に目指したいところとしては

「モノづくりの工程がちゃんと買う人に伝わること」

「それをブロックチェーンとか信頼のある技術で担保してより確かな情報として見えるようにすること」

ですね。

棄てるということは、地球に戻すということです。それを前提にモノづくりをしていく社会がこれからの”あたり前”になるのかなと思ってます。

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辻井:結局、生き方とか幸せの定義とかみたいな話になると思うんですよ。根本的に近代合理主義というかいわゆる資本主義的な考え方でやるともう山をバンバン切ってソーラーパネルをバンバン張って、「いいことやってます!」みたいな考え方になってしまいますよね。それって、本質的じゃない。

 

オーガニックコットンにしても、めちゃくちゃ安いものは作ってる人に負担がかかっています。だから安くていい物が手に入ってラッキーっていうだけじゃなくて、そこにいる作ってる人、育ててる人、届けてくれた人「みんながハッピーになったら自分もなんか嬉しいな」っていうそこの体験みたいなのができると、結構クセになるんですよ。

 

自分がちょっといい人間になったんじゃないか、みたいな錯覚に陥って(笑)。いい錯覚なのでどんどんそれをやり始める。あぁなんか自分はいい循環の一部にいるんじゃないか。そういうことが企業側だけじゃなくて全体に起きてくるということが大事なんじゃないかと思いますね。

 

新井:それはパタゴニアさんにも言えますよね。僕らって「プライドを着ている」といつも思うんです。要はパタゴニアを着る人間は、その人の生き方としてパタゴニアと価値観を共有できてるっていうところは大きいかな。そこはヤマップも一緒でしょ?

 

春山:そうですね。僕らヤマップの一番の差別化は思想というか哲学だと思っています。

アプリを含め自分たちが手がけているコンテンツやサービスに関して、「自分たちはどう作り、どういうふうに使いたいか、使ってほしいか」というのをちゃんと発信しないと大量生産大量消費の一部になってしまう。その発信まで含めて”モノづくり”だと思ってます。

 

罪悪感よりクリエイティブな仕組みをつくる

辻井:今のマーケットでいいなと思ったのは、PASS THE BATONっていう遠山さんっていう社長が作られたお店がすごくいいコンセプト。

平たくいうと古着屋と古道具屋がくっついたみたいなお店ですね。すごく面白いのは春山さんのジャケットは古着屋にもっていくと500円、なんてことはありえますよね。でも、思い出が詰まっているから500円だと嫌じゃないですか。

でもpass the batonに持っていくとインタビューされるんですよ。1枚につき15分くらい。目利きの人が「春山さんこれはいいストーリーだなあ」って言うと、2人で値段決めるんですね。「どうします?狼の毛がついてるから正規商品越えだね、75,000円でどうだ?」なんて。

そして、売れた金額をお店と元の持ち主で折半するんですよ。春山さんのストーリーが全部タグにつくんですね。だからpass the batonのロゴってバトンを渡すロゴなんです。

もう一つすごくいいなと思ったのは、有田焼。バブル崩壊してたくさん余ってしまって、管理もされずに売れないカップとソーサーが蔵に1,500枚ぐらいあったらしいんです。
それを、全部一点物として、新しいプリントを載せて販売した。それをリライトといってもう一回ライトを当てる。環境だからとかこれ棄てるの悪いからというと動きにくいけど、そういうクリエイティブな仕組みがあると参加するだけなんですよね。

 

企業として成長をどう捉えるか

春山:ご参加の皆さんの方からご質問やご意見等あればぜひお願いします。

 

参加者:「会社として成長する」ということをどう定義するかは非常に大きな問題だと思っています。みなさんどのようにお考えでしょうか?

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春山:大量生産大量消費の構造を変えていくためにはメンテンナスにもきちっと対価が支払われて、長く使うことに価値があるという考え方を企業もユーザーも持たないといけない、と考えています。

メンテナンスも含めて事業化することはすごく時間がかかりますが、地道に取り組みたいと思っています。

 

辻井:僕は両方の相互作用だと思うんですけど、社内ではどうやって環境問題を解決するためのインパクトを大きくするかっていうのが基準になっています。その時に気をつけていることはお客さんに「Buy what you need?」って言ってるんですよ。

「Not what you want」つまり欲しいと思って衝動的に買うのではなく、本当に必要なものを買う。そのニーズに応える分くらいを供給するのが一番いいバランスだろうなと思っています。

 

反対ではなく関心を

参加者:石木ダムに関連した質問です。

ダム建設や石木に関わりがない人、接点が無い人が多い中で、闇雲に情報を発信しても知ってもらえない、情報を取りにいってもらえないと思うのですが、何か工夫されていることはありますか?

 

辻井:工夫をしようと努力していることは、「反対」っていうふうに僕らは言わないようにしています。現地に住んでる53人の方はどんな理由があっても故郷を奪わないでくれって反対するのが普通ですが周りにいる人がそのトーンでやったりすると対決になってしまう。「未来のあり方をみんなで話して決めましょう」という「反対より関心を」の姿勢は僕すごくいいかなと思ってますね。

 

ソーシャルビジネスとスケール

参加者:自分自身でビジネスをやるにあたって、社会課題を解決するという点である程度スケールをさせて世の中に与えられるインパクトを大きくしていかないといけないと思います。
ソーシャルビジネスでスケールさせていくための巻き込み方、をお伺いしたいです。

 

辻井:スケールが目的になっちゃうとずれると思います。取引先もお客様も世間も見てるのは、本当に信念を持ってそのことを変えずにぶれずにやってるかっていう「本物さ」なんです。

だからパタゴニアも1回も成長したいっていうゴールにしたことはありませんね。創業者であるイヴォンはビリオンダラーカンパニーを目指したら文化も変わるし無駄な物を売るようになるからこの会社はおしまいだってずっと反対してたんですよ。

だけど今の状態を見て文化はそんなに変わってないし、無駄な物をたくさん売るっていうふうに誰も思ってないし、結果としてやっぱりよかったねってなっている。

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新井:ソーシャルビジネスっていうのは、普通の企業と違ってスケールはそこまでしないですね。やはり時間もかかるので。なので、より多くのソーシャルビジネスが出ることが必要です。多くのソーシャルビジネスが出てきて一気に変わるほうが多様性があるしすごく力強いものになる。その中の一部がたぶん時間をかけて大きくなっていくんだろうって思っているのでそういう意味では焦らないでくださいっていうのが正直なところですね。

 

「better the new」新しい価値の提案

参加者:「リユースがもっと当たり前になる生活はこんなに素敵だよ」といった価値観や生活習慣に変えていくためにどういうコミュニケーション設計をしていけばいいか参考になることがあったらぜひ教えてください。

 

辻井:僕たちはうまくいっているかは別としてworn wearっていうステッカー作っています。worn wearって着古した服って意味なんですね。

ここにお客様のストーリーを投稿してもらってるんですよ。この服を着てこんなところに行ってこんなことをしました。その思い出があるのを息子にあげたらすごい喜びましたみたいなストーリーを共有する。標語としては「better the new」つまり「新品よりもずっといい」っていうのをつけています。結構共感して頂いていて、「僕のストーリーも載せたいです」みたいな感じで投稿があるのでそういうのを一緒に広げていけたらいいかなと思いますね。

 

別としてworn wearっていうステッカー作っています。worn wearって着古した服って意味なんですね。

 

 

春山:ということで、時間がちょっと延長してしまいまして中身の濃い話になったのではないかと思います。

あっという間ではありましたけれども、今日のお話はここで一旦終了となります。ご参加いただきありがとうございました。

著者プロフィール

YOUTURN編集部
株式会社YOUTURNは、首都圏でキャリアを積んだビジネスパーソンと、福岡で社会課題の解決に挑む企業とのマッチング事業を展開する会社です。スタートアップ都市として芽吹きつつある福岡のベンチャー企業、地場の優良企業への移住転職で、キャリアップとQOLの向上を実現してみませんか?