「実績も知名度もないのに、自社に興味を持ってくれるのか?」
「入社後の人事評価制度はどのようにつくればいい?」
「企業の成長段階で、求められる人材像で変わってくるのでは。」

福岡に限らず、ベンチャー・スタートアップ企業の人事・採用に関する悩みにはいくつか共通点があるもの。

成長企業のリアルな「あるある」エピソードとその打開策を聞くことは、似たようなフェーズにいる企業や、起業家予備軍、あるいはベンチャーへの就職を考えている方々にとっても、大いにヒントになるのでは。

そんなテーマのもと2018年6月29日、Fukuoka Growth Nextにて、福岡の若手経営者「福岡エイティーズ」の5名、そしてその各社の人事担当の方々が集結。クロストークが繰り広げられました。その一部を、ここに公開!

 

登壇者プロフィールはこちら

福岡移住でキャリアアップを実現する方法は?

 

【01】無名のスタートアップ企業が人材を手繰り寄せる裏ワザとは?

■後輩、家族、元同僚……。身近からあたりをつける、基本のキ

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▲(左)株式会社YOUTURN 代表取締役 中村 義之

中村:創業初期、スタートアップ企業がいろんな苦労に直面するのは当然だと思うんです。中でも人事、採用面は大変。何しろ何者でもないゼロからのスタートで、知名度もお金もない。そこにいい人材を集めようとしてもなかなか難しいんですよね。

またその時期を過ぎても、今度は加速度的に成長していくとそのときはその時で欲しい人材が足りなかったり、変わったりと別の苦労も出てくる。

そこで、今回はそんなスタートアップの「採用の苦労」を知っている皆さんに、こうした課題とどう向き合ってきたのかを教えて頂き、これからのスタートアップの方々に参考にしていただきたいというのが狙いです。まずは「会社の知名度が低い中で、どう人を集めてきたのか?

 

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▲(右)株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長 田口 一成氏

田口:僕がボーダレス・ジャパンを起ち上げたのは13年前。その前は、ミスミという会社にいて、そこの同期から5人が創業期にはつぎつぎ参加してくれました。

なので、創業期は自分の友人やその知人が入ってきてくれたんです。それ以外の公募となると、うちの場合は中途ではなくて、新卒採用ばかりでしたね。

 

中村:新卒こそ、知名度もないスタートアップに来てくれるのは難しい気もしますが?

 

田口:信用や知名度より先に「お金がなかった」からですね(笑)。

起ち上げメンバー全員の給料を前職よりガーンと下げて20万円くらいにしてもらっていた。そんな状態だから、それなりのキャリアを持つ中途社員を公募しても払える給料がない。

「新卒しか雇えなかった」というのが実態だったと思います。

 

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▲(右)株式会社ホープ 代表取締役社長兼CEO 時津 孝康氏

時津:私も身近からですね。中学の後輩に声がけして彼と2人でスタートさせました。最初はハローワークに募集も出したのですが、いまひとつフィットする人材がこなくて。
そこで当時、中国に留学していたその後輩に電話して「うちで働かないか? 給料7万円だけど」と誘ってみたんです。すると当時、回線がADSLで聞こえにくかったんでしょうね。7万円と言ったのに「17万円? やります!」と勘違いして帰国。入社してくれた(笑)。

「住む家がない」というので、ワンルームマンションに借りた小さな事務所に住まわせて。「ここに住め」と(笑)。それが一人目の社員です。
中村:今もその方のお住まいは事務所で?

 

時津:いや、さすがに(笑)。

 

中村:ヤマップさんはどうでした?

 

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▲(右)株式会社ヤマップ 代表取締役 春山 慶彦氏

春山:完全に身内戦略でした。「登山用地図アプリ」という着想はあってもそれを作れるエンジニアがいない。どうしようかなとあたりを見渡したら、そういえば姉の旦那さんが腕のいいエンジニアだったことを思い出して…。YAMAPリリースから半年後に、ジョインしてもらいました。今のCTOです

また、義兄の弟が家に引きこもっていたので、「引きこもるくらいなら手伝ってよ」と誘ってもうひとり。僕と身内の3人でYAMAPはスタートしました(笑)。

 

■エンジニア採用における「福岡」の強みとは?

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▲(中)株式会社株式会社クオリティー・オブ・ローカルライフ・ジャパン代表 青野 玄氏

青野:身内から、は私も同じでしたね。元々2003年に、SLDというカフェやライブハウスを運営する会社を起ち上げていたのですが、ちょうど最低資本金制度が変わった直後で5万円で創業。とにかくお金もないうえ、私もまだ当時23歳の若造普通に募集しても誰も来てくれないだろうなと考えて、身近なところから声をかけた、という感じです。ただ「だからこそいい人材が採れた」という実感もある。

 

中村:どういうことですか?

 

青野:当時15年前なんてダイバーシティなんて言葉も一般でない頃。

端的にいえば「新卒で就職するか」「夢を追いかけてバイトで食いつなぐか」といった二択を迫られるような状況だった。一方で私自身、音楽好きでライブハウスなどをしていた面もあるので、そういう若いやつらがいっぱいいたんですね。

彼らをちゃんと社員として雇いたい、しかも少しカッコいい職場で。そのうえバンドや音楽で食べていく夢を追えるような環境を提供してやりたいなと思い声をかけました。

すると正直、給料も安いとはいえ「それならぜひ」といきなり5人集まった。だから最初期は、採用に困った記憶がないんですよ。

 

中村:なるほど。身内だからこそ似た価値観の人間がいる。下手に条件を広くしてなるべく大勢から……なんて思うより、むしろ効率的にマッチする人材と出会える可能性は高いというわけですね。それはおもしろい視点ですね。グッドラックスリーの井上さんはいかがでしょうか?

 

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▲(中)株式会社グッドラックスリー 代表取締役社長 井上 和久氏

井上:僕はもともと「いまソーシャルゲームが来てるから。お前、エンタテインメント詳しいし、やってみないか?」と、務めていた会社の社長に言われて、面白そうだったので、「はい!やります!」と即答して起業したんですね。ただ手をあげたけど、ゲームは好きでも、つくったことはないし、プログラミングもそこまでできない(笑)。

そこでまずゲームプログラマーを雇う必要があったのですが、当時はソーシャルゲームが盛り上がっていて、ゲームプログラマーの年収が1,000万円超だった。会社から提示された予算が1,000万円だったので「1人雇ったら終わるな」と頭を抱えていたんです。実はそのときに地元・福岡にあらためて出会った

 

中村:「福岡にあらためて出会った」とは、どういう意味でしょうか?

 

井上:プログラマーを探していたときに偶然、福岡在住のフリーの方に出会いまして。その方に話をきいたら私達の予算内で「数百万円の報酬でお仕事引き受けられますよ」と。

当たり前のことですが、賃金にエリア差があることを実感したんですね。しかも、優秀なプログラマーが福岡くらいのサイズだと意外と埋もれたまま結構いるだろうと。そうした縁から彼がプログラマーの第1号になり、そのまま「福岡で開発」というスタイルになっていったわけです。

 

中村:拠点を福岡にした契機は「採用」にあったわけですね。それくらい大きいですよね。

 

■スタートアップに、新卒採用はアリかナシか?

中村:お話を聞いて、意外と皆さんが最初から新卒採用に積極的だったことに驚きました。やはり新卒だと「親の意見」なども入りがちで名前も知られていないスタートアップには不利しかないと思ったのですが。田口さんは、当時、新卒採用を成功させるコツなどはありましたか?

 

田口:正確にいうといわゆる「新卒募集!」と広告を出すような採用とは違ったんですよ。「事業内容を研究したいから教えて欲しい」とか「将来起業したいので、相談に乗って欲しい」なんていう意識の高い学生がよく会いに来てくれたんですね。そういう学生さんたちがボーダレスに入ってきたという感じです。

最初の事業が外国人向けのシェアハウスで、当時としてはとても早かったんですね。そこで目立って興味をもってもらえた、というのは強みとしてあったかなと。

 

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中村:とはいえ、実際にヒアリングした学生を入社まで持っていくのは難しかったのではないですか?

 

田口:そんなことないですよ、逆でした。学生のうちから、うちの会社に興味を持ってくれている子、目指しているビジョンから共感してくれている子ですからね。

考えてみたら10人採用したいとして、適当に応募された方も含めた広く1,000人の応募の中から選ぶより、最初から強い興味をもった、たった11人から10人選ぶほうが合理的ですよね? モチベーションが高い分、実は育成コストもかけがいがあるというか。

 

中村:要は、いい人材である可能性も高いと。

 

田口:はい。実際そうでした。ただ、1つ気を使ったのは「オフィスを見せない」ことでしたけどね。4畳半くらいでめちゃくちゃ狭くてボロかった。入り口のドアなんて高さが170cmくらいしかないから、男性は特にこう頭を屈めないと入れない。先に会社を見せてしまうと誰も来なくなりそうだと思ったので、必ずカフェで面接していましたね。

 

中村:入社後、オフィスを見てびっくりされたのでは。

 

田口:そうだったかもしれないですね。ただ、オフィスで決めるというより「同じ夢を目指している」という観点で来てもらっているので「ここから頑張ろう」みたいな(笑)。

 

時津:うちの新卒採用も少し似ています。うちは最初の1人は身内でしたが、その後は、もう20人目くらいまですべて新卒を採用しました。募集は大学の掲示板でしたね。募集をかける費用が無料、という点も大きかったです。

 

中村:スタートアップでも、募集すると学生からの反応は結構あるものですか?

 

時津:いや。そうでもないです。ただ無料ですからね。当時お金はないけれど、時間だけはあったので。時間だけは採用に費やしてやろう! という戦術でした。

「説明会やります」というビラを各大学の掲示板に貼って出向いて。ごくごくたまに学生さんから反応があると「興味あったら来てみてください」と名刺だけ渡していました。実は喉から手が出るほど来て欲しいけど、もったいつける。「なんだか伸びていそうな会社だな」と思ってもらいたくて。

 

【02】“成長痛”を乗り越えるには?

■ IPOを果たした直後、どんどん人が辞めていった

中村:採用を中心にした組織づくりに関して、みなさんが「ああ、ここが1番キツかったな」と感じたのは、どんなときでした? いわゆるスタートアップならではの急激に会社が大きくなるタイミングで、どう人を採用して、育てて、制度をつくっていくか……という「成長痛」のような難しさがあると思うのですが。青野さんは?

 

青野:思い浮かぶのは、上場の直前直後ですね。

 

中村:良い時期のように思えますが?

 

青野:僕らはそもそも比較的、ブラックな業界といわれる飲食業をクリーンにして、イメージを変えて行こうと考えていました。実際、評価制度や休暇制度もクリアにして、先輩の働きぶりも正直ベースで公開しました。

そして「上場を目指しています!」と旗をかかげて業界を変えてやろう、くらいの気持ちもあったんです。結果、ものすごい人気になって、リクナビで募集をかけたら「120倍」の求人倍率に。「たぶん外食業界で1位ですよ」と営業の人に言われましたね。

 

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中村:そこでまたいい人材を多くとることができて、経営のスピードもあがったのでは?

 

青野:ええ。目標として掲げていた上場に向けて良くも悪くもスピードアップしましたね。そして上場が見えてくるとなお「いつまでに何店舗出して」「いついつまでに売上は何億で」と、なんというか数字に引っ張られる経営になっていく。

こうなってくるともう「店舗開発」にしろ「経理・会計」にしろ、直接採用する人材だけでは間に合わなくて、ビジョンなんていいからスキルのある人をとろう、というフェーズになったときがある。すると前からいた社員たちとギスギスした雰囲気にもなりまして。

 

中村:スピーディに上場することこそが目的化していると、最初のビジョンなどを共有していた人たちとギャップが出てくるわけですね。

 

青野:そうなんです。結論からいうと、そうした軋轢もあって、上場したあとは、最初からいたメンバーが大量に辞めていきました。とても痛手を負ったし、果たして「そのスピード感での上場」という目標設定が正しかったのか、という反省にもなった。

 

中村:今だったら、どうします?

 

青野:シンプルに、上場しないですね。機能的に採用せず、ビジョン優先で採用しながら、その人たちが成長していくスピードで「できるときにする」で良かったのかなと。

 

井上:共感しますね。僕らも最初に「株式公開をする」と決めて資金調達をしたので。そこから事業計画をひくと必要な仕事量と必要な人員がだいたい見えてくる。

もちろん、当時からビジョン、理念、行動指針というものも掲げているんだけど、そのスケジュールに従うと、もうビジョンというよりスキルベースを重視した採用にならざるを得ない局面が必ず出てくる。もちろん、うまく行っているときはいいんですけど……。

 

中村:うまく行かなくなると?

 

井上:そこを引き金にして組織の崩壊が始まる……みたいなところがある。結果、そのせいでまた皆が無理して、事業そのものも業績が悪くなって、結果、ステークホルダーに迷惑をかける、ということだってある。最近は、結局のところ「自然体の経営」が1番なのかなという気がしていますね。

 

■ 規模が大きくなるほど「評価制度」は大切だ。

時津:私は、もう少し初期のタイミングで、悩みがありましたね。先に言ったように20人くらいまでは新卒だったのですが、規模が大きくなり、お金も増えてきたので「中途採用をしよう」と始めたんですね。そして中途の人が入ってくると、会社に「評価制度がない」ということが弱点になってきた

 

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中村:なかったんですか?

 

時津:恥ずかしながらなかったです。今でこそ人の会社を見るときにB/Sと評価制度を必ず聞くのに、当時は「評価なんてあとからついてくるもんだろう」みたいなことを思っていて、明確な制度がなかった。20人くらいまでの給料はとにかく私1人が決めていました。

 

中村:それは時津さんの主観で決めていたのですか?

 

時津:完全に主観です。ツールも方法もなかった。そうなると中途の人はとくに不満なわけですよ、当然。特に大企業にいた方なども来てくれていたのに「明確な評価制度がないのは解せない」と感じた方も少なくなかったはず。それを理由に辞めた方というのは、実は多いんだろうなと感じています。

つまり、ある成長ラインを超えるともう、自分1人の目線だけで経営を引っ張るのは、人事・採用を含めて、難しいよねと。だからこそ、そうした人事が得意な人間を採用して、今にいたるという面もあるんですけどね。

 

■ 今いる人員が、いつでもベスト!

中村:春山さんは、いかがですか?

 

春山:YAMAPはいま、ちょうど30人くらいの規模なので、私が率先してやっています。大変ではあるのですが、CEOの最重要タスクのひとつは「誰を船に乗せるか」。つまり採用だと思っているので、採用に関しては私が直接会うと決めています。興味を持ってくれて、YAMAPに合う方がいれば、日本全国どこでも会いに行くというスタンスです。

 

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中村:面接では、どこを1番見るんですか?

 

春山:カルチャーフィットですね。例えば私が気に入っても、他のメンバーが1人でも「うちのカルチャーと合わなそうだな」となったら採用を見送ります。15人くらいの規模までは、メンバー全員が候補者と面談していましたね。

 

中村:それは大変ですね……!

 

春山:ええ、大変です。けれど、実際そこまで時間をかけて採用するから離職率は低いです。バブル期のような「成長こそが正義」という時代が終わった今、会社組織も数より質の時代になっている。そう考えると、自分たちの会社と入ってくる人がフィットするかどうかを見極めて採用することが、とても大事になっている実感しています。100人くらいまでは私や経営メンバーが率先し、採用をがんばろうと思っていますね。

 

中村:田口さんはいかがですか?

 

田口:はい。僕は採用に困ったことがなくて……。

 

中村:お~。ボーダレスの社員の方が、何名か首をかしげてはいますが(笑)。

 

田口:いや、でもそれはどういう意味かというと、「今いる人間でやろうぜ!」という意識があるんです。井上さんがさっき言った「自然体の経営」と近い。経営に関してがんじがらめに計画を立てて、逆算して人をとっていくというのは、意味がわからないというかイケてない気がするんです。

ひとまず事業のために一生懸命やるうち、足りなければ人を採るし、足りていればそれでいいというか。仮に人手が足りないときに人が採れなくても、今度は知恵が出ると思うんですね。結束力も高まったり。あくせくしないで行こうぜ、けれど一生懸命にね、っていうのがね、スッキリしますね。

 

中村:決してスローなタイプの経営者の方々じゃないみなさんが、そのようなスケール重視やスピード重視ではない人材採用観を持っているのは興味深いですね。今っぽいし、これから新たにスタートアップを立ち上げる方、あるいはジョインする人にも一つの指標になる気がしますね。

 

【03】スタートアップ人事担当者が語る、ホンネ

■ 結局見るのは、スキルか、ビジョンか。

中村:最後のセクションでは、各社の人事担当者の方、今回は3名の方に登壇いただき、さらに現場レベルでのスタートアップ起業の採用の苦労と工夫などを伺いたいと思います。

まずは簡単な自己紹介をグッドラックスリーの早川さんからお願いします。

 

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▲(左)株式会社グッドラックスリー  早川 徹氏、(中)株式会社ホープ 平木 正剛氏、(右)ビジネスレザーファクトリー株式会社 加藤 千穂氏

早川:はい。井上の下で採用担当をしています。経歴でいうと、これまでは採用担当というのをしたことがなく、営業として「お客様に採用をすすめる」という仕事をしていました。けれど、そこで採用ってめちゃくちゃおもしろい、人っておもしろいなと感じて、加えて、趣味だったゲームと重なった場所に、グッドラックスリーがあった。そこで採用担当として転職してきた、という感じです。

 

平木:ホープの平木と申します。私僕はもともと東京で10年のほどグラフィックデザイナーをしていました。ホープに入社したときには、もちろん人事のじの字も知らずデザイナーとして入りました。ところが気がつけば人事部長になっております(笑)。

 

中村:では最後にボーダレス・ジャパンの加藤さん。

 

加藤:ボーダレス・ジャパングループのビジネスレザーファクトリーという会社で人事担当をしている、加藤千穂とと言います。実は、私も人事のじの字も知らず…。

もともとは前職はウェディングプランナーでした。いまビジネスレザーファクトリーでは人事も手がけるのですが、店舗設計のディレクションなども手がけています。

 

中村:みなさん3名とも人事未経験者なんですね。福岡エイティーズには、大抜擢する社長が多いということなんですかね。

先に経営者の方々から「採用に関する課題」は伺ったのですが、現場レベルではそれがどんな具体的な課題になっているのか、みなさんにお聞きできますでしょうか。

 

早川:先程から「成長痛」の話が出ていましたが、まさに退職者が一気に出た、ということがあったんですね。毎月毎月、人が辞めるという状況。実はそのタイミングで私も入社しました。だから、最初は「この会社大丈夫かな」と感じいましたね(笑)。

結局、残ったメンバーで真剣に考え抜いて「この会社をどのようにしたいか」と話し合い、組織の考え方や人材配置などをあらためて仕切り直した。

だからスタートアップの人材というと、入り口の採用活動だけ注目されがちですが「成長途中では社内に向けたフォロー・活動がとても大切になるタイミングがある」ということは課題というか、経験として強く残っていますね。

 

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中村:なるほど。だからこそ、井上さんは「理念に共感してもらえる自然体の経営」をあらためて強く掲げていると。それに即したエントリーマネージメントを早川さんにて実践されているわけですね。ホープの平木さんはいかがでしょうか?

 

平木:現場の課題という意味では、もう課題だらけでして(苦笑)。あまりに多いその課題に手を付ける優先順位がわからない、というのが第1の課題なくらいですね。思い出深いことでいえば「半年で50人採用せよ!」というものがありまして。

 

中村:当時の社員数は何名でしたか?

 

平木:120人くらいですね。当時の社員の約半分を新規で採用せよ、という状況。その中で、先程みなさんがおっしゃっていたような「スキル」重視でとるのか「ビジョン」などの共感を優先させるのか。もっというと「そんなことも言ってられない」というプレッシャーのなかで、現場をハンドリングしなければならないというのは、やはり急成長のタイミングあるスタートアップならではの苦しさなのかな、と思っています。

 

中村:では、加藤さんはいかがでしょう?

 

加藤:うちもカルチャーフィットに重きをおいて人を採っている会社なんですね。

ただ一方で、やはりスキルも必要です。いくらカルチャーフィットしても「スキルが合わずいまの会社ではご活躍していただけない」では意味がない。それでは入社した本人も幸せではないと思うんですね。

そういう意味ではやはりスキルもマインドも大切で、逆に言えば、人としてフラットにうちの会社でどんな人生が歩めるか、何をしたいのかをしっかり見つけていきたい。

またそれは簡単ではないというところに、日々課題を感じているかと思います。

 

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■ 採用した社員たちに、人事は何ができるのか?

中村:今回ご登壇いただいている企業は「カルチャーフィット」を重視して採用していますね。課題もそこに紐付いている。入社時にカルチャーフィットを本当に見極めるのって、スキルを見極めるより難しいと思うんですね。

たとえば入社してみて「違った! フィットしない」となった場合は大変になるというか。人事としては採用前、あるいは採用後になにか工夫をされているのですか?

 

早川:弊社の場合は、必ず代表の井上が直接面談しますね。カルチャーフィットのカルチャーの部分を体現しているのはやはり彼なので。以前は、遠隔地からのウェブ面談などもあったのですが、それだけでは伝えきれない何かがあると思い、直接会うことがマストになっています。

 

中村:一方でスキルが合わないということもあると思うのですが?

 

早川:そのときは社内の職種変更は柔軟にできるようにはなっていますね。

 

中村:ホープさんはいかがですか?

 

平木:弊社も社長がカルチャーフィットを体現しているので「必ず時津と面談する」ということはやっています。スキルのほうで言うと、ジョブローテーション制度を設けていますね。半年に1度、異動願いを出せば別部署に行ける可能性がある。

それこそ急成長するなかで新しい職種や部署が生まれているので、そういう意味でも「自分はこのスキルだ。この仕事だ」というだけじゃない可能性を見い出せる場にもなっていると思います。

 

加藤:そういう意味では、ボーダレスは「カルチャーベース」という集団ができました。

各事業ごとに1人、会社がより良くなるため、どうすればみながワクワクし輝けるのかということを考えながら、カルチャーを醸成するような手法を考え実行しているんです。

 

中村:具体的にはどのような手法を取り入れてるんですか?

 

加藤:はじまったばかりですが、今は手始めにボーダレスグループ全社のアニュアルブックを作っています。沿革や業績が載った会社紹介ではなく、ボーダレスのカルチャーを明文化して、理念やビジョンを言動に落とし込めるような形にしたい。

 

中村:なるほど。そういったものをつくりながら理念やビジョンを定着させ、また人を定着させていくわけですね。

こうした課題にとても前向きに取り組んでいるのも今回、ご登壇いただいた会社の大きな特徴かもしれませんね。現場の生の声も伺えて、大変勉強になりました。ありがとうございました。

 

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■登壇者プロフィール

(スピーカー)
◇青野 玄氏
クオリティー・オブ・ローカルライフ・ジャパン代表
1980年福岡生まれ。横浜国立大学卒業後、2004年1月、株式会社エスエルディーを東京渋谷にて創業。カフェを中心に様々な業態の飲食店舗を国内各都市にて約70店舗展開。合わせて商業空間プロデュース事業、イベント企画制作事業も展開し、2015年3月、東京証券取引所JASDAQに株式を上場。2018年3月、同社を退社し、QOLL japanを創業。課題の最先端が集積する“地方”の潜在的価値に魅せられ、各地域毎の課題をビジネスで解決し、都市から地方への人口逆流を促進すべく活動中。

◇時津 孝康氏
株式会社ホープ 代表取締役社長兼CEO
1981年1月生まれ。福岡県朝倉郡夜須町出身。2005年福岡大学在学中に有限会社ホープ・キャピタル(現:株式会社ホープ)を創業。「自治体を通じて人々に新たな価値を提供し、会社及び従業員の成長を追求する」という企業理念のもと、自治体に特化した広告事業を中心に自治体の財源確保をはかる新たなビジネスモデルを確立している。

◇田口 一成氏
株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長
1980年生まれ。福岡県出身。早稲田大学商学部卒。大学2年時に、発展途上国で栄養失調に苦しむ子どもの映像を見て「これぞ自分が人生をかける価値がある」と決意。株式会社ミスミ入社後、25歳で創業。現在は、日本・韓国・台湾・中国・バングラデシュ・ミャンマー・ケニア・トルコ・グアテマラで20を超えるソーシャルビジネスを推進中。

◇春山 慶彦氏
株式会社ヤマップ 代表取締役
1980年福岡県生まれ。同志社大学卒業後、アラスカ大学留学。帰国後、株式会社ユーラシア旅行社『風の旅人』出版部に勤務。その後フリーランスとなり、2011年5月にYAMAPを着想。2013年にローンチし、株式会社セフリを設立。現株式会社ヤマップ代表取締役。

◇井上 和久氏
株式会社グッドラックスリー 代表取締役社長
1980年生まれ。福岡市博多区出身。東京大学工学部卒業後、2004年に株式会社ドリームインキュベータ(DI) 入社後、アニメ開発DLE(代表作 「秘密結社鷹の爪」)の主担当として株式公開に導く。2013年にグッドラックスリーを創業。さわって!ぐでたま」シリーズ 累計400万DL突破。「エアリアルレジェンズ」累計200万DL。「ブロックチェーン×エンターテイメントで世界最先端を走る」というビジョンを掲げ、国内初ブロックチェーンゲームの「くりぷ豚」、「クリプトアイドル」、ブロックチェーンアミューズメントプラットフォーム「Rakun」などを手掛ける。地域発企業ドラマ「人生のメソッド」シリーズは、福岡国際映画祭2018上映作品。

(ファシリテーター)
◇中村 義之
株式会社YOUTURN 代表取締役
1984年生まれ。福岡県出身。筑波大学第三学群卒業。2008年、株式会社ディー・エヌ・エー入社。EC事業に従事。2010年10月、同社から分社・独立した株式会社みんなのウェディングの設立に取締役兼マーケティング部長として参画。2014年3月、同社取締役兼事業本部長として東証マザーズに上場を果たす。2016年5月、地元福岡で株式会社YOUTURNを創業。首都圏のスタートアップ人材と地方企業のマッチング事業を展開中。

著者プロフィール

YOUTURN編集部
株式会社YOUTURNは、首都圏でキャリアを積んだビジネスパーソンと、福岡で社会課題の解決に挑む企業とのマッチング事業を展開する会社です。スタートアップ都市として芽吹きつつある福岡のベンチャー企業、地場の優良企業への移住転職で、キャリアップとQOLの向上を実現してみませんか?