子育て・教育事業が地方にこそ必要なワケ

地方にこそ子育てがしやすい環境を

日本の出生率は減少を続け、2016年に初めて100万人を割り込みました。

 

一般的に人口減少はそれ自体がネガティブであるように論じられがちです。しかし、筆者は人口減少自体を悲観するつもりはありません。

 

なぜなら、人口減に伴う労働力の減少によってもたらされる産業の合理化や生産性の向上、多様な人材の労働市場への参加が促進されるなど、人口減少という一種の変化はポジティブな側面も多く含んでいるからです。

 

一方で、人口減少に今後数十年歯止めがかからなかった場合、急速な人口減少に対して社会・経済的な適応が困難になる可能性があります。

 

外国人労働力の緩やかな受け入れや、あらゆる産業が国内市場縮小だけでなく海外市場に活路を見出しすための期間。年金や健康保険などの社会システムの変革に必要な期間。

 

多くの社会・経済的リスクをできるだけ回避し、備えるには、相応の期間が必要です。そのためにも、緩やかな人口動態の変動の方が望ましいと考えています。

 

そして、人口動態変化のカーブを緩やかにするには、減少傾向が一向に止まらない出生率を早期に上昇に転じさせることは有効である、と言えるでしょう。

 

経済が成熟し個人の経済的自由度が高まり、かつ都市化が進行すると出生率は減少傾向になることは世界共通です。さらに、都市部は地方よりも一層出生率は低くなります。

 

都市部で出生率が低くなる理由は複数要因ありますが、出産・育児にかかるコストが高く、必要な保育園数等、社会資本が整っていない点は大きな要因として挙げられます。しかし、都市部の社会資本を急速に整えていくことはどうしても難しい。

 

だからこそ、地方にできるだけ人口を分散させ、社会資本投資のコストが低い地方で、子育てや教育がしやすい社会づくりを行うことこそ、日本の未来を変えうる活路があると思うのです。
 

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人口減の地方でこそ女性の社会参加を促進すべき

地方都市が子育て・教育の環境整備に力を入れることは、女性の労働力活用の観点でも有用です。

 

東京から地方に移住を検討する層の多くは、結婚後すぐや出産後の子育て世代。地方に育児や教育に適した環境を求めて移住する世帯を惹きつけるためにも、行政だけでなく企業にもまだまだやるべきことはあります。

 

筆者が活動拠点としている福岡市は「住みやすい街」として一般に認知されています。ですが、意外なことに福岡の出生率は東京とほぼ変わらない1.3前後(東京は1.2前後)。

 

「住みやすい街」と「子供を産み育てやすい街」とは別物であることが分かります。とはいえ、地価が東京よりも安く、自然に近い環境は福岡に限らず多くの地方都市の良さ。

 

その利点を活かして、子育て・教育の領域でベンチャー企業イノベーションを起こすことで、地方のほうが東京よりも子供を育てやすい環境になれば、日本の人口動態が変わることになるかもしれません。

 

その意味で、地方でこの領域のベンチャーが成長することは社会的に意義の大きなことですし、子育て・教育に関心のあるビジネスパーソンはぜひ飛び込んでみてほしいと思っています。
 

福岡の子育て支援ベンチャー#1

「IoT見守りデバイスで安心安全な子育て社会を創る」株式会社otta

 

どんな事業をやってる?

株式会社ottaは、IoT見守りデバイスとスマホアプリで子供の位置情報を親が確認できるサービス「otta(おった)」を提供しているベンチャー企業。

 

GPS追跡型の見守りサービスとは異なり、通学路や学区内の主要なポイントにビーコンを設置して、子供がそこを通過すると親の持つスマホアプリに通知が入る仕組みです。この仕組みの長所は、

 

例えば、帰宅時間帯に「今、近所の郵便局の前を通過した」というリアルタイム情報がプッシュ通知で知らされること。GPSの位置情報を常にウォッチしておく必要がないところです。

 

ottaは、福岡市の警固小学校校区を皮切りに、大阪の箕面市全域、東京都の渋谷区など提携自治体を着実に増やしており「子供の見守りを街全体で取り組むエリア」を拡大中。

 

従来の村社会では機能していた「コミュニティで子供の安全を担保する」社会的仕組みを、テクノロジーで再構築することをミッションとして事業を展開しています。

 

どんな経営者が経営している?

株式会社otta代表の山本氏は、子供の頃から電子部品の組み立てが趣味だったという生粋のエンジニア。エンジニアとしてキャリアを開始し、営業職も経験するなど、今のottaに必要な開発力と自治体・大企業とのアライアンス提携力を培ってきました。

 

見守り事業の着想を得たのも、ご自身の子供が生まれたことがきっかけ。実体験にもとづく想いを込めて事業を運営しています。当初、広島でottaを起業した山本氏は見守りサービスの導入先を探していたときに、福岡市長である高島氏からの誘致を受け本社を福岡に移転。現在は福岡に限らず全国の主要エリアに導入先を増やすなど積極的に事業を成長させています。

 

経営目標と経営課題

当面の大きなマイルストーンは上場を果たすこと。そのためにも見守りサービス「otta」の導入エリアの拡大が急務です。フリーミアムのビジネスモデルで、導入先エリアの保護者がスマホアプリを無料ダウンロードして、追加機能を課金して提供する形。

 

すでに導入先となっている自治体や校区で一定の課金率を達成できているようなので、まずは面を広げてこのサービス分野のデファクトスタンダードになることが必要でしょう。

 

どんな人材が活躍できるか?

導入先を増やす過程でサービスの改善や保守運用にかかる開発体制を強化し、見守り「インフラ」となれるだけの盤石な信頼性を築き上げることも重要。そのため、エンジニアの採用ニーズは常にあります。

 

また、自治体や学校など公共団体にシステムを導入するためには、コミュニケーション能力に優れ、システムをわかりやすく利用してもらうための導入支援コンサルタントがこの事業の成否を決する役割を担うといっても過言ではないはず。

 

また、一定の普及が実現した後には、課金率をあげてマネタイズを促進するためのグロースハックができるマーケッターの採用ニーズも発生するでしょう。

 

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株式会社ottaの求人情報

「IoT見守りサービスという新しい地域の絆作り」株式会社otta山本社長

 

福岡の子育て支援ベンチャー#2

「ママ・コミュニティの運営で子育て世代をサポート」株式会社リトル・ママ

 

どんな事業をやってる?

株式会社リトル・ママは、子育て世代の母親を対象としたフリーペーパーやWEBメディア、リアルイベントなどを展開する子育て支援事業を展開する企業。同社は福岡で創業した企業ですが、福岡だけでなく東京にも拠点を起き、積極的にママコミュニティを拡大・運営しています。

 

どんな経営者が経営している?

リトル・ママ創業者であり代表の森氏は、前職時代に育児関係のチラシ制作を手がけたことをきっかけにして、育児現場の抱える課題に問題意識を持ち、子育て情報を提供するフリーペーパー事業を開始。その後、紙面だけでなくWEBメディアやコミュニティ、リアルイベントなど、子育てママとの多様な接点を設けて育児の悩みや孤独を解消する活動を展開しています。

 

どんな人材が活躍できるか?

子育て支援情報とWEBコミュニティを提供するウェブサイト「リトル・ママ」の開発を手がけるエンジニアを募集中。オウンドメディアやコミュニティサイトの開発と運用実績のあるエンジニアはその経験を活かせます。また、同社は20数名の組織のため、ユーザーからのフィードバックを即座に反映したり、エンジニア以外の職種のメンバーと柔軟にコミュニケーションが取れる方が望ましいと考えられます。

 

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株式会社リトル・ママの求人情報

 

福岡の教育系事業者#3

「日本有数のベンチャー投資家が学長の先進大学」日本経済大学

 

どんな経営者が経営している?

ベンチャー企業ではないですが、日本経済大学という学校法人のご紹介。学長を務めるのは、ベンチャー投資でも数多くの実績を誇る都築明寿香氏。ベンチャー投資やインキュベーションを展開しつつも、家業である大学経営の学長に就任し、教育分野で様々な新しい取り組みを実践しています。

 

今年9月にはノーベル平和賞にもっとも近い日本人と言われている日本ミャンマー未来会議代表の井本勝幸氏が特命教授として就任。

 

また、10月には50周年行事の一環として株式会社eumo代表の新井和宏氏(鎌倉投信創業者)を招き「新しい日本に必要なリーダーと経営」というテーマでフォーラムを開催。新しい時代に必要な教育を創り上げようとしています。

 

同大学では様々なプロジェクトが進行しており、それらを担えるプロフェッショナル人材を求めています。ベンチャー企業ではありませんが、教育領域において新しい取り組みにチャレンジしたい方は、ぜひYOUTURNまで問い合わせください。

 

地方の育児・教育分野に飛び込んで日本の未来のつくり手になろう

「目に見える社会への貢献実感」。

 

東京から地方へ移住を検討するビジネスパーソンの多くが求めるものの1つではないでしょうか。

 

大きな予算を動かしていたり、巨大なマーケット・ユーザーを相手にしたりしていても「実際に自分の手で社会をどれだけ良くしているのか」「喜んでくれる真のユーザーが遠い」と感じている方は少なくありません。

 

また、結婚や出産を機に移住を検討する人も多いでしょう。そういった動機の方にとって、子育て・教育関連の事業領域はまさに直接的な貢献実感を得られる分野。

 

特に、地方都市の規模感であれば「今目の前にある課題の解決」に取り組めたり「実際に喜んでくれるユーザー」を近くに感じられたりすることも多い。

 

これは確実に、幸福度の上昇につながる働き方だと思います。

 

興味や関心の湧くベンチャー企業を発見したら、YOUTURNに問い合わせ頂けると幸いです。

 

福岡のベンチャー企業で注目すべき6領域

 

【1】「地方でやるべき事業」だからおもしろい! 福岡から地方創生を実現するスタートアップ3選

【2】テクノロジーで新たな社会システムを創出する福岡のテックベンチャー

【3】次世代の「子育て・教育」の仕組みをつくる福岡のベンチャー企業(本稿)

【4】人生100年時代に「医療・健康」を支えるイノベイティブな福岡発ベンチャー3選

【5】待ったなしの超高齢化社会で「介護・高齢者問題」を地方から解決する福岡のベンチャー企業

【6】地方ベンチャーの活路はグローバルにある!世界を狙う福岡のベンチャー企業
 
 

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著者プロフィール

中村 義之
株式会社YOUTURN創業者。地方のアセットを活かして持続可能なライフスタイルとイノベーションを生みだすための起業インフラを創出中。メイン事業はU・Iターン特化の転職エージェント。地方産業革新の担い手になりたい人材募集中。