人生100年時代の健康寿命を支える事業を地方から創る

高齢化が進む地方都市は健康寿命の促進に注力すべき

「課題先進国」日本の中でも、地方はそのフロントランナー。山積する課題の中でもとりわけ大きなものが「超高齢化」社会であることは間違いありません。

 

もちろん、高齢化自体が悪いわけではなく、人口に占める「支えられる側」としての高齢者の比率が高すぎることこそが問題です。、医療・社会保障関連の「支える側」の負担が過度に大きくなりすぎ、制度自体に破綻をきたすからです。

 

ではどうすればいいのか? それは、高齢者の健康寿命を向上させ「生産人口」にとどまる期間を増やすしかありません。

 

東京などの大都市圏に先駆けて、人口動態が超高齢化に突入している地方都市。

 

過疎地域で病院が近くにないエリアでの医師による遠隔診療や薬剤師によるオンライン服薬指導などテクノロジーによる医療・健康分野の実証実験を行政主導で認可している例もあります。

 

YOUTURNが活動している福岡市では、本来は対面が義務付けられている服薬指導を、国家戦略特区としてオンライン服薬指導の実施事業者を募集し、実施しています。
 

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医療・ヘルステックベンチャーはグローバルを目指せる

地方都市では、産学官が連携して、医療・健康分野のイノベーションを起こすハブになっていくべきです。医療・健康分野の事業は、国や地域によって法制度や認可が異なりますが、本来、診療や医療・予防などは人類共通なのでグローバルで展開するポテンシャルのある領域です。

 

課題先進国のフロントランナーであることは喫緊の課題です。この課題を将来的なチャンスに転換するためには、地方都市の存続を左右する重要かつ緊急な問題としての「超高齢化」という現象を活かした次代の産業づくりを行うべきです。

 

そのためには、行政による規制緩和や実証実験の公募、大学や研究機関によるテクノロジーの提供、ベンチャー企業やスタートアップによる事業化など、産学官の連携が必須です。国家戦略特区でありスタートアップ都市宣言を表明している福岡市では、実際にこのような連携や、医療・健康分野を手がけるベンチャー企業が増えています。

 

福岡の医療・ヘルステックベンチャー#1

「デンタル×SaaS事業で歯科業界に革新を」株式会社DentaLight

 

どんな事業をやってる?

株式会社DentaLightは、歯科医院向けの予約CRM「ジニー」を展開する福岡のベンチャー企業。昨今の健康寿命を語る文脈で、口腔ケアの重要性が注目を集めていますが、デンタル業界は未だにテクノロジーで合理化されていません。

 

コンビニの数よりも多い歯科医院において、患者とのリレーションや診断を合理化し改善する社会的ベネフィットは大きいはずです。

 

デンタライトが提供するCRM「ジニー」は、歯科医が患者に対して予約の案内やリマインドを送信することができ、診察券アプリなども提供。混み合う歯科の予約は電話することが億劫だったり、診察が終わった後に次の診察の予約をせずに帰ったりすることも多いことは、筆者の実体験としてもあります。

 

事業としては、CRMをSaaSで提供する粗利の高いビジネスモデル。コンビニ以上の数がある大きなマーケットであり、十分に上場まで狙えるポテンシャルのある事業領域だと思います。

 

どんな経営者が経営している?

デンタライト創業者であり代表の藤久保氏は、鹿児島出身の起業家。

 

広告業界を経て独立し、歯科領域で起業しようと決意。歯科医のコンサルティングを通じて歯科業界が抱える課題やチャンスを見出して、SaaSのCRMである「ジニー」を開発しました。

 

同社は今年の2月に500 Startups Japanや、福岡の独立系ベンチャーキャピタル、千葉巧太郎氏などの個人投資家から総額1.6億円を調達しており、ファイナンス面でも手腕を発揮しています。

 

経営目標と経営課題

同社の経営ミッションは「歯科医療を通じて人々のQOLを向上すること」。現在は歯科医向けのCRMを主に提供しているが、将来的にはその事業を起点にして多様な事業展開が可能になるはずです。

 

目下の経営目標は株式上場。そのためにも同社の基幹事業である「ジニー」を着実に普及させる必要があるでしょう。

 

筆者が考える「ジニー」普及のための条件としては、歯科医に受け入れられるプロダクト開発と、歯科医に信頼されうる営業スタイルやチームの確立です。前者のプロダクト開発においては、これまで歯科業界が合理化されてこなかった要因である専門性や複雑性をいかに克服して、一律に広く展開できるシステムを開発できるかが鍵でしょう。

 

どんな人材が活躍できるか?

ジニーを歯科業界に普及していくためには、業界知識や歯科医院のオペレーション理解と、それを拡販可能なシンプルなパッケージに落とし込む設計・開発が必須です。SaaSやCRMを開発した経験のあるエンジニアは採用ニーズがあるでしょうし、活躍できるはずです。

 

また、これまでアナログな患者管理をしていた歯科医院に「ジニー」のメリットを丁寧に説明して導入を促進できる営業メンバーも必要です。

 

顧客とのリレーション構築力と、オペレーションが複雑な業界にWEBサービスを導入するための論理的思考力が備わった営業実績のある方は確実に活躍できるはず。

 

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「福岡から1兆円企業をつくる」歯科業界にイノベーションを起こす デンタライト藤久保社長

 

福岡の医療・ヘルステックベンチャー#2

「訪問服薬指導で高齢者に安心の社会づくり」HyugaPharmacy株式会社

 

どんな事業をやってる?

HyugaPharmacy株式会社は、「きらり薬局」という薬局チェーンを展開する福岡のベンチャー企業。2008年に「福岡から日本の高齢者の生活を守るブランド薬局をつくる」というミッションで創業しました。現在、福岡エリアを中心に全国で20店舗以上の薬局を展開中。

 

同社の特徴は、従来の薬局の枠組みにとらわれず、高齢化問題や介護問題に対する取り組みを行なっているところ。たとえば、足が不自由な高齢者や外出が困難な方に処方せんの薬を配達するなどです。

 

また、今年は「福岡市健康先進都市戦略」の一環として、オンラインでの服薬指導を開始。全国に先駆けて社会課題の解決に向けた先進的な薬局経営を展開しています。

 

どんな経営者が経営している?

同社の創業業者であり代表取締役の黒木氏は、自身が26歳のときに急性膵炎を患ったことをきっかけとして起業を決意。その後、介護施設への薬の配達を始め、その後、在宅患者への薬の配達やオンライン服薬指導などの様々なサービスを打ち出している。

 

筆者が知人を介して黒木氏にお会いしたのは1年半ほど前。

 

その時に、黒木氏から地方の高齢化社会が抱える老老介護や介護離職の問題の深刻さを伺って衝撃を受けました。同社の訪問サービスはただ単に処方せんの薬を自宅に届けるだけにとどまりません。家族の介護に従事する方の孤独感払拭や、心の支えになるとのこと。非常に社会性が高いサービスを、ビジネスとテクノロジーという拡大可能な形で提供している経営者が福岡という地方都市に存在することは、将来の日本にとって大きな希望になり得ると思います。

 

経営目標と経営課題

HyugaPharmacy株式会社はメガベンチャーを目指して事業を拡大しています。その中の当面の経営目標として株式上場を検討しているとのこと。薬局のチェーン展開という堅実なビジネスモデルの上に、オンライン服薬指導などのテクノロジーを活用したサービスを付加価値として展開しています。

 

上場した後、マーケットに対して売上・利益の成長目標を提示する以上、面をとるための店舗数拡大によって売上成長を、テクノロジーによる付加価値サービスによって利益成長を志向することが経営戦略として定石でしょう。

 

どんな人材が活躍できるか?

HyugaPharmacy株式会社は、旧来型の薬局チェーンという側面と、ITを活用したサービス提供者という2つの側面があります。リアル店舗の出店展開やスーパーバイザーなどの経験があるビジネスパーソンは、スキルセットをそのまま活かせるでしょう。また、IT領域で医療・ヘルスケア分野に携わった経験がある方も、同社の付加価値サービス領域で力を発揮できるはずです。

 

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福岡の地方創生ベンチャー#3

「AI×病理画像診断の本格メドテックベンチャー」メドメイン株式会社

 

どんな事業をやってる?

メドメイン株式会社は、2018年1月の創業したばかりのベンチャー企業。ディープラーニングによる病理画像診断ソフト「PidPort(ピッドポート)」と、医学生向けクラウドサービス「Medteria(メドテリア)」を提供しています。

 

同社は九州大学医学部に在学中の学生が中心となり、同大学の起業部から発足したスタートアップ。ディープラーニングに特化したVC(ベンチャーキャピタル)であるDEEPCOREと、地元福岡のVCであるドーガン・ベータから1億円を調達しています。

 

どんな経営者が経営している?

代表取締役社長の飯塚氏は、同大学医学部の4年生。自身が病理診断を受けた際、診断結果が出るまでに長い期間がかかったことが事業アイディアを思いつくきっかけ。

 

病理診断とは、病気の疑いがある際に行われる精密診断のことで、その診断を専門とする病理医は、慢性的に不足状態にあります。

 

そうした課題に対し、AIによる画像解析だけで診断ができる同社のサービスは、診断結果が出るまでの期間を短縮することができる画期的なものです。

 

経営目標と経営課題

メドメインの事業は、起業以前からシリコンバレー等のビジネスプランコンテストで高い評価を受け優勝。

 

迅速な病理診断は患者の命を救うことにつながるため、スピード感を意識してか、5年以内の上場を目指すとしています。

 

AIによる画像解析での病理診断は、世界的にも同様の研究開発が進められており、グローバルの競争に勝ち抜いていくためにも、今後も継続的に大型のファイナンスや医療機関とのアライアンスが必要となってくるでしょう。

 

ディープラーニングの精度をあげるための鍵はAIに取り込むデータの質と量ですが、九大医学部と九大病院との共同開発という同社の優位性をどれだけ発揮できるかが重要だと思われます。

 

どんな人材が活躍できるか?

今年8月に実施した1億円の資金調達を元手にして、積極的な採用活動を行なっています。メインとなる職種はWEBエンジニアとAIエンジニア。

 

医療×テクノロジーという人命に関わる分野と、グローバル展開を志向するスタートアップでチャレンジすることに気概を感じるエンジニアにはぜひ参画してほしいと思います。

 

まとめ

人生100年時代において、健康寿命の延伸は今後も人類における大きなテーマであり続けるでしょう。

 

日本は世界的に見ても長寿を誇る国であるとともに、超高齢化社会という課題先進国でもあります。そのフロントランナーである地方において「長く健康に生きる」とは単に哲学的な主題にとどまらず、地域の社会経済の存続に関わる喫緊の課題。

 

とらえ方によっては、社会や経済、技術の劇的な進歩というのは強烈な課題意識からしか生まれないものであり、その意味で地方において医療・健康分野においてイノベーションが発生する必然性は大いにありえると考えています。

 

課題はチャンスであり、新たな未来を創り出すきっかけにもなります。その未来の創り手の一人になりたい方は、課題の現場を直面せざるを得ない地方に腰を据えて、課題解決に挑むベンチャー企業に参画してはいかがでしょうか。

 

YOUTURNではそのような社会性の強いベンチャー企業やスタートアップの求人を取り揃えています。ご興味ある方はぜひお問い合わせ頂けると幸いです。

 

福岡のベンチャー企業で注目すべき6領域

 

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著者プロフィール

中村 義之
株式会社YOUTURN創業者。地方のアセットを活かして持続可能なライフスタイルとイノベーションを生みだすための起業インフラを創出中。メイン事業はU・Iターン特化の転職エージェント。地方産業革新の担い手になりたい人材募集中。