介護・高齢者問題は地方から産業化できる

目前にある課題がチャンスに変わる

東京に住んでいると身近に感じにくい介護・高齢者問題。筆者が地元の福岡やその郊外で活動していて感じるのは、東京では見ることのない「高齢者ばかりの田舎」というリアルです。

 

これは地方に限らず確実に数十年後、東京でも同様に訪れる状況です。つまり、地方が課題先進国日本の中でもフロントランナーであることの最もわかりやすい光景であり、課題そのものと言えます。

 

地方都市では生産人口が都会へ流出し、後継者不足や地域経済の縮小によって産業が衰退。残っているのは、高齢者と介護問題だけ、と言い切っても良いような現状に既になっている、あるいはなりつつある地域が多いのです。

 

いち早く、日本が世界に先駆けて直面する「介護・高齢者問題」を自分ごととして真正面から捉えチャンスに変えようとしているのが、地方で活躍するベンチャー企業です。
 

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世界的な人口増加後の高齢化がチャンス

「地方には介護問題と高齢者しかない」と考えるのではなく、それを一つの産業創出の機会ととらえる起業家がいます。介護需要が大きいということは、それが産業として成立するということ。

 

産業化できれば、後発で超高齢化がやがて訪れる都心部でも展開可能なビジネスとなります。

 

グローバルでも社会経済の成熟が進むと同様の社会課題は構造的に訪れるので、世界のマーケットも相手にできるのです。

 

東京から地方へ移住を検討する人の中には、少なからず両親の側で暮らす必要を感じたからという理由も多いはず。東京でキャリアを築いてきたビジネスパーソンが、両親の介護という理由で地方に移住することで、キャリアを断念せざるを得ないような社会的構造は、一刻も早く解決すべきです。

 

もし、そういった理由から東京から地方へ移住するビジネスパーソンがいたら、ぜひ介護系スタートアップやベンチャー企業に参画して、地方からこの構造を変えて、産業化に一役買って頂きたいと強く思います。

 

福岡の介護ベンチャー#1

「AI×介護で介護業界の課題を解決する」株式会社ウェルモ

 

どんな事業をやってる?

株式会社ウェルモは、AIとICTの活用で「利用者本位の介護」を実現することをミッションとして介護領域に関連する様々なサービスを提供する福岡のベンチャー企業。

 

展開しているサービスは主に3つ。介護に関する社会資源情報を一元的に集約して検索できるサービス「MILMO(ミルモ)」、人工知能(AI)によるケアプランの作成支援を行うCPA(ケアプランアシスタント)、発達障害を持つ子供達向けの放課後デイサービス「UNICO(ユニコ)」の3事業を展開しています。

 

今年6月、同社は複数のベンチャーキャピタルから総額4.5億円の資金調達を実施し成長を加速。

また8月には、福岡市と福岡県介護支援専門員協会と協力して、ケアプラン作成支援AIの実証実験を開始するなど先進的な取り組みにも積極的です。

 

どんな経営者が経営している?

株式会社ウェルモ代表取締役CEOの鹿野氏は、ワークスアプリケーションズ出身の起業家。介護現場のボランティアを通して感じた、日本の超高齢化社会の課題をテクノロジーで解決すべくウェルモを創業しました。

 

筆者が鹿野氏とお会いした第一印象は、「ビジョナリーな人物」。資本主義が持つ構造的な社会課題を、介護事業という突破口から打破しようという信念を持っていて、パッションが強い経営者だなと強く感じました。

 

また、ウェルモは福岡で創業した会社ですが、鹿野氏は大阪出身で東京でキャリアを積んだビジネスパーソン。なぜ福岡を選んだかというと、全国の介護現場を渡り歩いて、福岡の人の良さに惹かれたとのこと。

 

経営目標と経営課題

ウェルモのミッションはテクノロジーを活用して利用者本位の介護を実現すること。事業上の当面の目標は株式上場で、調達した資金を用いて積極的に事業に投資をしている最中です。同社の3つの基幹事業を限られたリソースの中でいかに成長させられるかが鍵。

 

また、現在実施しているケアプラン作成支援AIの実証実験をもとに、2019年秋を目処にβ版を提供開始することも目標としています。同社の競争優位性はまさにこの領域にあるので、3つの事業の中でも最優先事項になっているはず。

 

どんな人材が活躍できるか?

ウェルモは介護領域に熱い志をもっているメンバーが集う会社で、ウェルモで活躍するためには介護に対する課題意識や想いを強く持ち合わせている必要があるでしょう。また、職種としてはプロダクト開発ができるエンジニアを募集中。Webアプリやスマホアプリの開発経験や人工知能分野の開発経験がある方を求めています。

 

発達障害を持つ子供達向けのデイサービス「UNICO」でも拠点開発担当者を募集しています。コンビニなどのリアル店舗出店戦略などを担当した経験があり、子供の障害や教育領域に興味をもっている方は活躍できそうです。

 

福岡の介護ベンチャー#2

「介護を持続産業に変える!」ザ・ハーモニー株式会社

 

どんな事業をやってる?

ザ・ハーモニー株式会社は「介護を持続的な産業に変える」ことをミッションとして設立された福岡のベンチャー企業。介護事業所であるデイサービスを3拠点展開していて、現在、複合型の老人ホームの開設も準備中です。

 

介護施設にとどまらず、AIを活用した認知症患者向けのコミュニケーションロボットも開発中で、施設運営によって利益率は低いが安定的な収益と雇用を生み出しつつ、テクノロジーを駆使して収益性の高い事業の立ち上げも行なっています。

 

どんな経営者が経営している?

ザ・ハーモニー代表の高橋氏は、福岡県飯塚市出身の起業家。学生時代にファッションデザイナーとしての独立を志して大手アパレル会社に入社後、本場イタリアで修行した経験も。介護事業で起業したのは、イタリアから帰国後に久しぶりに両親と同居した際に、介護サービスについて課題意識を抱いたことがきっかけとのこと。

 

「自分の親に利用してほしい」「自分自身が利用したい」そんな介護サービスを自らつくることで、高齢社会の課題解決を目指しています。また、若者が働きたくなるような明るく楽しい介護サービスをつくり、若者が都市部へ流出しないための雇用も創出する。そんなビジョンで経営をされています。

 

経営目標と経営課題

ザ・ハーモニー株式会社の本社は、福岡の郊外に位置します。高橋氏の言葉を借りるなら「地方の地方」。そういった地域から「介護」という社会課題をチャンスに変えて持続可能な産業に転換することが同社のミッションです。

 

私自身、同社があるエリアは何度も訪れたことがありますが、まさに過疎地域で炭鉱の街として栄えた産業は衰退し、若者は流出。高齢化も進んでいます。

 

そんな中で、ザ・ハーモニー社は20〜30代の若者が中心になって介護施設を運営。とても明るい雰囲気の中で若者が働き、利用者も満足しています。このような企業が事業をスケールさせて成功事例になったとき、課題先進国日本の潮目は変わっていくのではと、にわかに期待してしまいます。

 

同社の当面の経営目標は株式上場。福岡という地方都市の郊外から、介護領域で上場企業が生まれれば他の地方都市にとって大きな希望になるでしょう。

 

そのためにも、デイサービスや老人ホームを収益性を担保した上での多拠点展開、テクノロジーを駆使した介護ロボットの商品化と高収益化がクリアすべき課題です。

 

どんな人材が活躍できるか?

ザ・ハーモニーでは、現在COO、CTO候補人材を強く求めています。COO候補は、CEOの高橋氏直下で介護施設事業の運営と新規出店の統括をするポジション。CTO候補は現在開発中の認知症向けロボットの開発や施設の業務システムの開発を担うポジション。

 

いずれも同社の飛躍には不可欠の役割を担うポジションなので、介護の現場で働くことやアナログな業界をテクノロジーで変革することに志がある方にはもってこいの仕事だと思います。

 

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地方の介護業界にこそ課題解決人材が必要

これからの日本の社会が避けては通れない超高齢化社会において、介護問題は必ず付いてくる大きな問題です。介護問題には、介護保険などの社会保障制度の継続性の問題や、介護事業に従事する労働者の不足、介護サービス自体の品質の問題など、様々な解決すべき問題を含んでいます。

 

そして、その問題の多くは、課題解決人材が一極集中している東京ではなく、地方で起こっています。

 

東京だけを見ていても、未来の日本は見えてきません。志ある課題解決人材が東京から地方へ、課題解決の現場へ向かうことが新しい国づくりをする第一歩だと思っています。

 

東京で一定のキャリアを積んで、次の、あるいは残りの自分の人生のエネルギーを、意義のある事業や活動にぶつけてみたいと思う方は、ぜひYOUTURNに問い合わせをしてほしいと思います。

 

福岡のベンチャー企業で注目すべき6領域

 

【1】「地方でやるべき事業」だからおもしろい! 福岡から地方創生を実現するスタートアップ3選

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著者プロフィール

中村 義之
株式会社YOUTURN創業者。地方のアセットを活かして持続可能なライフスタイルとイノベーションを生みだすための起業インフラを創出中。メイン事業はU・Iターン特化の転職エージェント。地方産業革新の担い手になりたい人材募集中。