多くの企業に必要ながらも、多くの方が頭を抱える新規事業の立ち上げ。

1つの事業だけでは企業を大きくすることは難しいため、成長企業こそ次の事業を常に意識しなければなりません。

しかし、失敗すれば大きな損失を作ってしまう新規事業は無闇にチャレンジできないのも事実。

そこで今回は「新規事業のつくりかた」をテーマに、New株式会社代表取締役の柏谷 泰行(かしわや ひろゆき)氏をお招きして、2019年2月4日、DIAGONAL RUN FUKUOKAにて開催したイベントの模様をお届けします!
 

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<スピーカー>

◇柏谷 泰行氏 New株式会社 代表取締役
2008年大学卒業後、サイバーエージェントグループのシーエー・モバイルに入社。営業、企画、エンジニア、新規事業マネージャーを経て独立。2011年に株式会社イグニスに参画し、取締役プロデューサーとして30以上のプロダクトを開発し、累計3000万ダウンロードを達成。億単位の営業利益をあげる新規事業を2つ成功させ2014年に東証マザーズに上場。2016年に株式会社Mellowを設立し、関東を中心に150店舗を展開する日本最大のモビリティサービスプラットフォームを生み出す。2018年にNew株式会社を設立し、様々な大企業と組んで新規事業を開発している。

 

事業立ち上げのプロになるまで

柏谷氏は事業立ち上げのプロフェッショナル。大企業などと手を組み、新規事業の立ち上げを行っています。

シーエー・モバイルで営業、企画、エンジニアや新規事業立ち上げの経験を経た後、ボードメンバーとして株式会社イグニスの創業に携わります。

 

イグニスではいくつものヒットアプリをリリースした後退職し、フードトラックの事業を起こし軌道に乗せました。

今回は柏谷氏が立ち上げてきた事業を振り返り、立ち上げ成功のポイントについてお話して頂きました。

 

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柏谷 泰行(以下、柏谷)
「私はイグニス立ち上げの前にシーエー・モバイルで様々な経験を重ね、最後は新規事業の部署に。

その後、より自分のアイディアをビジネスにしていきたいと考え、2011年に先輩たちと一緒に株式会社イグニスを創業したのです。」

 

新卒でシーエー・モバイルに入社した柏谷氏は、先輩たちともにイグニスの創業に携わります。

創業して数年はヒットアプリを出せず苦しい時期も体験しましたが、女性向けの節電アプリを皮切りにヒットアプリを連発させます。

今や巨大な市場に成長した無料マンガアプリの原型も、この時柏谷氏がこの時挑戦して作ったもの。

 

創業当初はいくつもの企画をしながらも、思うようにいかない経験もたくさんしてきた柏谷氏ですが、この時の体験が事業立ち上げに必要な「企画力」を養うことになります。

新規事業のプロになるための基礎体力を身に着けた時代とも言えるでしょう。

 

また漫画アプリの市場を開拓する際にも様々な壁が立ちはだかりました。

出版社などさまざまなステークホルダーがいるため、それらをうまく巻き込み、調整しながら進めていく必要があります。

特にこれまでなかったようなサービスを、既存の事業者が好意を持って受け入れてくれる可能性は高くありません。

それでも諦めずに交渉し続ける熱意が事業立ち上げには必要です。

 

「私自身、漫画がとても大好きで、その気持ちがあったから動き続けられましたし、周りを巻き込むことができたと思います」と柏谷氏。

 

新規事業というと戦略的にばかり考える方もいますが、自分が情熱を持てる分野かどうかが壁を乗り越えられるか決める要因と言っても過言ではありません。

柏谷氏は今でもそのことを大事にしています。

 

人の役に立っている実感が欲しくて始めたフードトラック事業

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柏谷氏

「ヒットアプリを作り続けた私ですが、リアルでも人の役に立つビジネスをしたいと考えるようになりました。

そこでイグニスを辞め、全く新しいチャレンジをしようと思ったのです。

当時は人の幸せについてとことん考えこみました。

 

結局答えは出ませんでしたが

『疲れている人が元気になる過程には幸せがあるのではないか』

と考えてみたのです。

 

そこで思いついたのが、フードトラック。

もし会社の近くに毎日新しいレストランが来たら、仕事が忙しいビジネスマンでも食事で幸せを感じられるのはないかと思ったのです。

 

そこでプラットフォームでフードトラックを管理し、それぞれの料理の特徴を踏まえて最適な場所に配車できるようにしたのです。

立ち上げ期は何度もやめようと思うほどの辛い経験もありましたが、3年後には100ヶ所ものスペースにフードトラックを配車できるまでになりました。」

 

アプリで成功したにもかかわらず、全く畑違いの分野にチャレンジした柏谷氏。アプリの成功体験は、リアルビジネスに全く通用しませんでした。

事業を構想したときは必ずうまくいくと思いながらも、事業を始めた途端に想像もしていなかった困難がいくつも舞い降りたのです。

そのほとんどの多くはステークホルダーの理解が得られなかった故のこと。

 

新しいことを始める際にはやるべきでない理由ばかりが見つかります

 

そんな中でも常にできる理由を見つけ、ひとつずつ課題を解決していったからこそ、ステークホルダーの支持を得ることができました。

その姿勢こそが事業立ち上げを成功させる大きな要因と言えるでしょう。

 

新規事業に大事な4つのポイント

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自分のこれまでのストーリーから事業立ち上げのエッセンスを伝えた柏谷氏は質疑応答に入ります。

新記事業の立ち上げのために必要なポイントを聞かれた柏谷氏は次の4つあげます。

 

      1、 企画力
      2、 戦略
      3、 修正力
      4、 根性か熱意

 

柏谷氏「事業の規模というのは結果的にどれぐらいになるかはわからないけど、上限というのは決まっているのです。
だからこそ、やるに足るほどのインパクトがあるかは、全て企画力で決まっていると言えます。」

 

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イグニス時代にいくつものアイディアを企画してきた柏谷氏は、事業を企画した際にそのビジネスの上限がわかるといいます。

これまでいくつもの事業を企画してきた柏谷氏ならではの意見でしょう。

 

柏谷氏

「ビジネスの上限は決まっていますが、その上限に必ず到達できるわけではありませんし、どれだけの時間でコストで到達できるかは戦略にかかっています。

そして初回と2回目くらいまでの戦略というのは、だいたい間違えています

しかし、3回目にはそれまでの失敗を踏まえて、いい戦略を練れている必要があるため、修正力が大事なのです。」

 

フードトラック事業の立ち上げの時も、予め練っていた戦略は全然通用しませんでした。

実際にビジネスを始めると、業界の慣習など、始めるまでは見えなかったところに課題が生じてしまうためです。

問題は課題が生じた後、課題を練り直せるかということ。

 

新しく発生した課題にいかに適切な戦略が練れるかが重要だと柏谷氏は言います。

 

柏谷氏

「そして最後は根性と熱意ですね。

根性がなくても熱意があれば続けられますし、仲間も集められます。仲間集めも人脈とか営業力だと思われがちですが、大事なのでは熱意です。

 

100人に声をかければ1人は共感して仲間になってくれる人はいますし、100人に声をかけられるのは結局熱意があるからなんです。」

 

マンガアプリの時もフードトラックのときはも決して楽な事業の立ち上げはありませんでした。

新しいことを始めるときは必ず課題が発生します。

 

その課題を解決するためにはスキルが必要ではありませんが、それ以上に事業を続けていくだけの熱意が必要です。

そして、その熱意を生み出すには、自分がやっていることに意義を感じられるかが重要だと柏谷氏の話を聞いていて感じます。

 

フードトラックの事業を始める前「人の幸せはなにか」と深く考え抜いた柏谷氏。
その時間があったからこそ、その後に起きた課題に屈することなく事業を形にできたのでしょう。

 

もし単にアイディアだけで事業を初めていたのなら、繰り返し起きるトラブルに事業は頓挫してしまったのではないでしょうか。

 

「何のためにやるのか」

 

その問いこそが、熱意の源泉になっているのだと思います。

 

新規事業のタネを見つける3つの方法

休みを挟んでセミナーの後半には、実際に新規事業のネタを見つけるワークショップを行いました。

新規事業のネタを見つける方法は次の3つがあるといいます。

 

      1、 既存事業を破壊する事業

      2、 今の事業が提供している価値と同じ価値を提供している別のサービスを世界中から探してパクる

      3、 新規事業担当者の全人格で勝負する

 

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柏谷氏「1、と2、は今回は触れません。このやり方でも、外資系コンサル出身の人材を採用してうまくいっている事例はたくさんあります。既存の市場をリプレイスしていくやり方です。

 

全人格で勝負するとはどういうことかというと、あなたのこれまでの人生で多くの時間を割いてきたことマインドシェアを割いていることで事業のネタを考えるやり方です。

 

コンプレックスや拭えない違和感などでもいいです。人によってスキルの差はあっても、生きてきた時間は一緒です。その時間の中で何をしてきたか、何を考えてきたのかを総動員して新規事業にするのです。」

 

柏谷氏はマンガアプリの立ち上げのことを例にあげます。高校時代、勉強する意味を見いだせなかった柏谷氏は、多くの時間をマンガを読むことに割いていました。その経験こそが全人格となり、ビジネスのネタになったのです。

 

その後実際に時間をとって、ポスト・イットに全人格を書き出すというワークショップが行われました。

 

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柏谷氏

「あまり固く考えすぎずに、これまで自分がどんなことに熱中したり、夢中になったりしたのか、100個でも200個でも書き出してみてください。

 

それらの全人格と、会社の持っているリソースを組み合わせることで、ユニークな新規事業ができるはずです。

新規事業を立ち上げる戦力としては不足していても、ユニークであれば覆すこともできるのです。

 

現に私は、何度も全人格を紙に書き起こして、日々アップデートしています。ぜひ時間をとって、自分の全人格はなんなのか、会社の持っているリソースはなんなのか、組み合わせて考えてみてください。」

 

新規事業のタネを見つけるには、まずはインプットありき

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▲イベント後の懇親会の様子

 

柏谷氏のセミナーを聞いていてインプットの重要性を強く感じました。
新規事業というと「今どんなトレンドがあるのか」「どんなニーズがあるのか」と外の世界にばかり目がいってしまいます。

 

しかし、全人格の話を聞いた時、

事業のネタも課題を解決するための熱意も全ては自分の中にあることに気付かされました。

 

自分とはなんなのか、何が好きで何が嫌いなのか、何を怖がり何のために生きているのか
それらに目を向けることからビジネスははじまります。

 

そして、私たちの身体が食べたものできているのと同じように、私たちの全人格は見たもの聞いたもの、インプットしたものから構成されています。

インプットが乏しければ、そこから生まれるものも貧しいものになってしまいます。

全人格の質をあげるためにも、普段からよく考え、質のいいインプットを増やしていく必要性を感じました。
(執筆:鈴木 光平 編集:榮田 佳織 撮影:中島 祐也)
 
 

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著者プロフィール

YOUTURN編集部
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