「複業研究家」西村創一朗さんのキャリア観を、YOUTURN代表・中村がじっくり聞く今回のインタビュー企画。
先日公開した第1部では、西村さんが19歳でパパになってから、新卒でリクルートへの入社を決めるまでのストーリーをお伝えしました。
今回の第2部では、西村さんが新卒で入社したリクルートで働きながら、「ひとり働き方改革」、「複業」、そして「独立」を選択するまでの道のりをお話いただきます。
「もっと家族との時間をつくりたい」「キャリアチェンジをしたい」…….。西村さんはそれぞれの場面で何を思い、働き方を選択してきたのでしょうか。
「ひとり働き方改革」で、家族との時間をつくる
▲株式会社YOUTURN 代表取締役 中村 義之
中村:リクルートにいた約6年間は、西村さんにとってどんな期間だったんですか?
西村:なくてはならないというか、この期間がなければ今の自分がないなって思えるくらい良い経験をさせてもらって、人との出逢いをたくさんもらった6年だったと思います。
中村:ワークライフバランスという点ではどのような変遷を辿ったんでしょうか。
西村:はじめは、夜9時から10時くらいに退社して家に着くのは日付をまたぐかまたがないかという生活でした。
ただ入社1年目に第二子が生まれてからは、長時間労働を変えてもっと家族と過ごす時間を増やさなくてはと思い始めて。それで、「一人働き方改革」を始めました。
まずは毎週水曜日だけは「勝手にノー残業デー」でどんなに仕事が終わってなくても帰る。やっぱりお尻を決めると人は頑張るんで。
中村:決めてからルールを変えたわけじゃなくてそこにアジャストしたと。
西村:「帰れたら早く帰る」だと永遠に早く帰れるようにならないと思って。まずは週1、次に週2〜3に増やし週4〜5にして。そこまで大体3か月、4か月ぐらいかかった。2年目ぐらいからやり始めて、ほぼ定時で帰れるようになったのは2年目の半ばぐらいですね。
中村:その時期ってまだ同期や一個上ぐらいの先輩は終電近くまで残っていたんじゃないですか?
西村:そうだったと思います。同期と僕の決定的な違いは「子どもがいるかいないか」。子どももいなくて自分の時間を100%自由に使える人たちと比べて僕の使える時間はかなり限られていて。
古い例えですけど、自分はいうなれば「巨人の星」の「筋肉養成ギブス」をつけてるぐらい自由度が無い。にも関わらず同期と同じ成果を出せたらかっこよくないかと思ってやっていました。
中村:具体的にはどんな工夫をされたんですか?
西村:僕が働き方改革、生産性向上のために使っているフレームワークに「 ECRS 」というものがあって。
まずは「排除(Eliminate)」、そもそもその仕事をやる必要があるかどうかを考えて必要ないものを排除する。次に「統合(Combine)」、別々にやっている仕事を一緒にやる。
次に「順序の変更(Rearrange)」を行い、それでもこれまでの方法で解決できないときだけ、業務の合理化や効率化を果たす「単純化(Simplify)」をするという流れです。
これは当時自分なりに考えてやっていたのですが、後々「クラシコム」の青木社長がこのフレームワークを紹介されてて、言語化されたという感じですね。
転職ではなく、「複業」を選んだ理由
中村:ワークライフバランスを整えていって、複業はリクルートに在籍しながら始めたんですか?
▲株式会社HARES CEO/複業研究家 西村 創一朗氏
西村:はい、3年目のときに。理由はとてもシンプルなんですが、キャリアに行き詰まりを感じたんですよ、入社2年目の終わりから3年目で。
僕は入社時から、事業家になりたい、子どもたちのより良い未来につながる事業をつくりたい、と思っていて。
とはいえスキルゼロの状態で事業側に回ってもパフォーマンスが出せないから、「まずは現場、マーケットを知りたいです」と言って、営業として入社をしたんですね。
当時は営業で成果を出したら事業側に行こうと思っていたんですが、その考えが甘っちょろいということに気づいた。
営業としてパフォーマンスを出した先にあるキャリアって、営業リーダー・営業マネージャー・営業部長……みたいな営業としての縦のライン。事業開発のような仕事は今の延長線上にはない、全然キャリアトランジションできなそうだと。
最初は転職を考えたんです。リクルートの経験を買って、事業を作ることにチャレンジさせてくれるようなベンチャーに飛び込もうと思って、転職活動をして内定をもらって。でも最終的に、奥さんに猛反対されたんですよ。
中村:そうなんですか。
西村:僕、「嫁ブロック特集」でテレビに出たこともあるんですけど(笑)
奥さんから「そもそもリクルートでやりたいって言ってたことをやりきったの?」と言われて、そう言い切れない自分がいて。
営業から事業開発に異動する可能性がゼロではない中で、やりきったわけではないと思ったときに、自分の中で選択肢が明確になって。転職するのはやめようと。
今の置かれた場所でしっかり努力をして成果を出しつつ、次の道を模索しようと思って考えた結果、生まれた選択肢が複業だったんです。
複業が、キャリアを広げてくれた
西村:複業として何をしようかと考えたときに、ブログメディアの立ち上げを思いついて。
僕はもともと入社一年目の頃から「日刊創一朗」っていう社内メルマガを配信してたんです。毎朝の通勤時間でインターネット業界のニュースを100本ぐらい斜め読みして、その中でみんな押さえておくべきだと感じたニュース10本ぐらいピックアップして、コメントを載せて送っていました。
その延長で、インターネット業界の面白い新規サービスやアプリを自分なりにピックアップして、これが何でイケているのか、逆に何でダメなのか、そういうことを解説するブログメディアをつくったんです。
始めてから4ヶ月ほどで、月間10万 PVぐらい、素人のサラリーマンのブログとしてはまあまあの成果を出せて。すると社内で「営業部に西村ってブログやってる奴がいるぞ」と噂になり、社内の新規事業部門の担当役員とつながりができて。
結果ブログを立ち上げて11ヶ月、入社4年目の4月には新規事業部門に声をかけていただいて異動することになりました。
中村:面白いですね。ブーメランを外に向けて投げてみたら帰ってきて、中で素敵な変化を起こしたみたいな。
西村:僕は複業してなければ今のキャリアはないし、希望する事業部に行けなかった。「複業を起点に理想のキャリアを実現できた」という原体験をもっと広めたいと思うようになり、2015年6月、株式会社HARES(ヘアーズ)を立ち上げました。
「ヘアーズ」はうさぎの複数形で、「二兎を追って二兎を得られるような世界を作る」という意味を込めています。複業 OK な会社を増やす、複業によってキャリアを切り開く人を増やすことを目指し、自分自身も「複業研究家」と名乗って複業の良さを発信し始めました。
その後、2016年1月のロート製薬の副業解禁をきっかけに、あらゆるメディアで「副業解禁」の文字が踊り、経済産業省で研究会が立ち上がったりし始めた。いろいろなところから僕にお声がけいただくことも増えてきたんです。
娘と過ごす時間を増やすには、「独立」一択だった
中村:それぐらいですか、独立されたのは?
西村:2016年12月に会社を辞めてるんですけど、独立を決めたのは2016年の6月ですね。
中村:それはやはり、世間的に副業が注目される潮目があったからでしょうか?
西村:それもありますが、一番の決め手は、娘の誕生ですね。もうね、想像を越えて遥かに可愛かったんです。
中村:はははは(笑)。
西村:長い人生で後悔することがあるとしたら、「あのときもっと娘と過ごしておけば良かった」ではないかと。
それで、このままじゃダメだなと思って。リクルートはとても良い環境があって、仕事も楽しかったし複業も認めてもらえたし不満はなかったんですけど、物理的な問題として、就業時間と就業場所が決められています。
例えば1日最低8時間以上働かなきゃいけないって決まっている。あと働く場所も決められている。通勤時間片道1.5時間往復3時間、年間720時間、通勤時間に費やされるこの時間を娘と過ごす時間に充てたいと考えたらもう、転職ではなく独立しかなかったんですよ。
働く時間と場所を100%全て自分でコントロールできる状態にするのは、会社員だったら無理なので。
中村:全ての会社に当てはまりますもんね。
西村:そう、だからもう独立しかないなと思いました。複業を始めて3年、会社をつくって一年が経ち、会社員としての給料と自分の会社の収益が変わらないくらいになっていましたし、世間の「副業の波」に乗れば少なくとも数年はやっていけるかなと。
2016年の6月30日、自分の誕生日に「俺もう会社辞めるわ」と奥さんに伝えて、翌日7月1日に上司に伝えて。12月末で、リクルートを辞めました。
複業である程度の収入基盤があったこともあり、その時は妻から反対されるようなことはなく、むしろ後押しをしてくれました。
最終回の3部では、西村さんが独立してからストレスで躁うつを発症したときのこと、「人生の選択肢に正解はない」と言い切れるようになった理由などをお伺いします!
西村さんとYOUTURN代表の中村がこれからのキャリアのトレンドについて話す、特別企画のイベントが
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著者プロフィール

- 株式会社YOUTURNは、首都圏でキャリアを積んだビジネスパーソンと、福岡で社会課題の解決に挑む企業とのマッチング事業を展開する会社です。スタートアップ都市として芽吹きつつある福岡のベンチャー企業、地場の優良企業への移住転職で、キャリアアップとQOLの向上を実現してみませんか?